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第十二章・4
通話を切り、大翔はソファに身を投げ出した。
「まさか聖也が、俺のこと好きだったなんて」
気づかなかった。
いや、気づいてあげるべきだった。
「楓先生とのデートの練習台とか、ひどいことさせてたよな……」
それでも、イヤな顔一つ見せずに付き合ってくれた聖也。
彼の笑顔が、目に浮かぶ。
「いいじゃん、聖也。顔立ちいいし、気が利くし」
そして何より一緒にいると楽しいし、心が和む。
楓先生といる時と同じ空気を、聖也には感じる。
がばと起き上がり、大翔は楓に電話した。
「もしもし、楓先生? 合格したらデートして欲しい、って言ってたよな。俺」
『突然どうしたの? 確かに約束はしたけど』
「明日、いい? 10時に中央公園の時計台前に来て」
『……いいよ』
ついにこの日が来た、と楓は気を引き締めた。
大翔のことだ。デートの〆には必ず身体を求めて来るだろう。
(でも、これで大翔くんに抱かれるのは最後と思えば……)
だが、大翔は奇妙な条件を付けてきた。
「難波も一緒に連れてきてよ。じゃあな」
『もしもし? 大翔くん?』
楓に何も言わせないように、大翔は素早く通話を終えた。
「これで、よし」
そして、聖也に再び電話を掛けた。
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