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第十二章・5
「まさか大翔さんが、楓とのデートに俺まで引っ張り出すとは」
「また、羞恥プレイをさせるんでしょうか。僕に」
家庭教師を始めた頃は、廊下でドア越しに楓の嬌声を征生に聞かせていた大翔だ。
二人が組長公認の仲になった腹いせに、そういった趣向を思いついたのかもしれない。
これが、二人の共通した考えだった。
時計台の前には、すでに大翔が待っている。
手を振って、合図している。
「おぉい、先生! こっちこっち!」
その手は、そのまま隣の小さな少年の肩に回された。
「遅れてごめんね、大翔くん」
「俺が勝手に早く来たんだよ」
「それで、その。こちらは?」
楓は、大翔に肩を抱かれている小柄な少年を見た。
「は、初めまして。永光 聖也です」
「聖也はぁ、俺の恋人♡」
ええっ!? と楓も征生も声を上げた。
驚く二人を、してやったりと眺めて、大翔は飄々と言った。
「Wデートしようぜ、楓先生」
思いがけない展開に、楓は声も出なかった。
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