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第十二章・7
「ランチは飲茶! 払いは難波!」
「私、ですか」
「この中で一番の金持ちは、難波だも~ん」
苦笑いする征生とともに、みんなで温かな鹹点心をぱくついたり、小吃を味わったりした。
「大翔さん、これで足りますか?」
「平気だぜ。後でカフェに行って何か食うから」
「僕、もうお腹いっぱい。まだ食べる気でいるの? 本城くん」
「水族館でたっぷり歩けば、腹ごなしになるぜ」
水族館、と楓は繰り返した。
「楓先生、好きかな~、って思って。イルカショーの時間もチェックしてっからよ」
「大翔くん、大人びたね。出会った頃とは、別人みたい」
出会った頃は。
先生としてマウント取られないように、って、凄んでフェラさせたっけ……。
当時の自分を思うと、何て恥ずかしいことをしたものか!
そんなことしなくても、楓先生は優しいしっかり者の指導者だったのに!
「あ、あの黒歴史は忘れて欲しいな~、とか?」
「本城くん、何したの?」
「や、何でもない!」
「ねえ、何したの?」
「何でもない、って!」
笑顔の絶えない、ランチタイムだった。
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