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第十二章・8
水族館では手をつなぐものだぜ、と大翔が言わなくても、楓と征生は自然に手を握り合っていた。
「やっぱ大人だな~。見ろよ、あの姿。すっかり二人の世界に浸りきってやがる」
「本城くん、僕も……、手をつないでもいい?」
「あ、ごめん。いいぜ、いつもみたいにやろう」
大翔と聖也は、手をつないだ。
聖也の胸は、いっぱいに満たされた。
(これまでは、楓先生の代わりだったけど。今は、ホントの恋人なんだ)
昨夜大翔に告白した後、すぐに返事があった。
『聖也、今までありがとう。俺も聖也のこと好きだからさ、付き合ってくれるか?』
そして今日の、Wデートの提案があったのだ。
(本城くん、楓先生の方ばかり見るかも、って思ったけど、違ったし)
楓は征生に任せて、大翔は聖也に気を配った。
映画館で飲み物をくれたり、ランチで皿を取ってくれたり。
「聖也、俺見てどうすんだよ。魚、見ないと」
「あ、うん」
幸せな心地の、聖也だった。
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