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第十二章・11

 やったやった、と大翔は聖也の髪をくしゃくしゃに撫でまわした。 「学校同じなら、ずっと一緒にいられるな!」 「教育学部に、進むよ」 「先公になるのか!? 奇特な奴だな!」 「勧めてくれたの、本城くんだよ?」 「俺?」 『将来、学校の先生にでもなれよ。担任の先公なんかより、ずっと向いてるぜ』  楓と征生のデートを見てしまい、気落ちした大翔を励ました聖也。  その温かな優しさと、力強い導きに感心した大翔が、彼におくった言葉だった。 「僕、あの時初めて将来の目標ができたんだ。だから、勉強も必死になって頑張れたんだ」  ありがとう、と見つめて来る聖也の澄んだまなざしに、大翔は照れた。 「よせよ。ま、お前ならいい先生になれるよ」  楓先生みたいな、と言おうとして、大翔はやめた。  聖也の前であの人の名を口にすると、きっと不安にさせるだろう。  まだ俺が、未練を持ってるのかと思って。  大翔の心には、しっかりと人を思いやる気持ちが育っていた。

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