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後夜祭で、Shall We Dance?②

 何事かと思い顔をあげると、視線の先で神宮寺が悠然と微笑んだ。  しかもギャラリーの注目がアイツだけではなく、何故か俺にも集まっているのを感じる。  そして二階堂さんに至っては、今すぐ俺を呪い殺してやるとでも言わんばかりの、源氏物語に出てくる六条御息所も真っ青な鬼の形相で睨み付けていた。 「へ......?」  意味が分からず、変な声が出た。  すると神宮寺はちょっと呆れた感じでフッと息を吐き、その場に片膝を付き、更には右手を恭しい感じで俺に向かい、差し出した。 「山田、俺と踊れ。  分かってると思うけど、お前に拒否権はねぇから」  は?何だ、この展開。  ......新手のいやがらせにしても、タチが悪過ぎんだろ!! ***  キャンプファイアの炎を囲み、ダンスを踊る人々。  でも男同士手を取り合って踊るカップルは、当然ながら俺と神宮寺の一組のみだ。 「お前なぁ......そんなに俺の事をからかうのが、楽しいワケ?」  すると神宮寺はニヤリと不敵に口元を歪め、耳元で囁くように答えた。 「楽しい。  お前の反応、いちいち面白過ぎ」  ムカついたからわざとステップを踏み外し、彼の足を思いっきり踏ん付けてやった。 「......ってぇな、仕付けが必要か?」  今度は口元だけでなく、綺麗な顔全体が歪んだ。  それを見て、少しだけ気が晴れた気がした。 「仕付けって、なんだよ?  俺の事、野良猫かなんかだと思ってんの?」  フフンと笑い、聞き返した。

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