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後夜祭で、Shall We Dance?③
「いいね、野良猫ちゃん。
お前特定の相手も決めずに、誰彼構わず構ってくれる女とフラフラ遊び歩いてるもんな。
俺が首輪を着けて、飼ってやろっか?
従順な飼い猫に、仕付け直してやるよ」
楽しそうにそんな戯れ言を言って彼は俺の手を強く引いて抱き寄せ、耳たぶを軽く食 んだ。
「にゃ......!?」
突然の凶行にパニクり、妙な声が出てしまった。
すると神宮寺はブハッと思い切り吹き出し、そのまま爆笑しながら言ったのだ。
「にゃ、って何だよ......猫の素質充分じゃん!
あーもう、クソ!腹いてぇ......。
お前は今日から、俺のペットな?
決定!」
ペット、とは?
下僕のように扱われ、パシリみたいにコイツにこき使われるという意味だろうか?
......そんなの、冗談じゃない。
「はぁ!?
お前、ホントふざっけんな!
突然神宮寺が、妙な事をしやがったせいだろうが!
断固、拒否する!」
大声で絶叫して彼を突き飛ばし、自分史上最速と思われるスピードでその場から駆け出した。
「あーっと、山田君、逃げちゃ駄目ですよ!
ダンスタイムが終わるまで、王子様のパートナー役をきちんと務めあげてくださーい!」
さっきの司会者らしき女の子がマイクを使って呼び掛ける声が聞こえたけれど、そんなの知るか!
それは無視して、ほぼ無人の校内へと逃げ込んだ。
しかしこれは、完全なる悪手だった。
......神宮寺に呆気なく捕獲された俺は、この後地獄と天国を同時に味合わさせされることとなる。
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