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世界が壊れた日②
そう......あの日俺は、心に決めたんだ。
だから俺は誰か特定の人間と付き合う事も、愛する事もない。
だってそんな感情、俺はもうすべて使い果たしてしまったから。
真実の愛なんて、信じない。
......そんなモノ、俺はいらない。
***
高校生になって、すぐの頃。
俺はひとりの女性に、恋をした。
相手は物理の先生で、白衣と眼鏡の似合う、美しい人だった。
俺の気持ちを伝えると、その人はそれを受け入れてくれた。
でも彼女は、既婚者で。
......俺はいわゆる、日陰の身ってヤツだった。
それでもいいと、最初は思った。
旦那さんの事をもう愛していないし、惰性で関係を続けているだけだと言う彼女の言葉を、完全に真に受けてしまっていたから。
だけど次第に欲が出てきて、彼女の心だけでなく、すべてが欲しいと願うようになった。
彼女は結婚しているけれど、心は自分にあるのだと、信じて疑わなかった。
でもそれは完全なる、思い上がりだった。
俺は彼女に、ただ遊ばれていただけだったのだ。
『ねぇ、先生。
そんな旦那さんとは別れて、俺とちゃんと付き合ってよ』
ラブホの一室で、情事のあと彼女の華奢で真っ白な体を抱き締めたまま、断られるだなんて微塵も考えること無く告げた。
しかしその瞬間彼女の眉間には、深いシワが寄せられた。
『は?......何言ってんの?
そんなの、無理に決まってるじゃない。
はぁ......最悪なんだけど。
いくら可愛い見た目をしてるからって、やっぱりアンタみたいな子供に手を出すんじゃなかった』
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