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第1話 文化部で一番弱そうだったから
一番最初に考えたのは、空手部だった。
強いってことは、とにかく凄い。
偏差値じゃ底辺をいくうちの高校でも、空手部は群を抜いて頭が悪かったが、この辺りじゃそこそこの強豪チームらしい。
クラブ見学の初日に体験入部。
ゴリラみたいな男共にボカスカ殴り飛ばされるわ、空手じゃ絶対ルール違反な寝技を掛けられるわ、まったくもって硬派じゃない。
それに、借りた道着はぶかぶかで、何度もズボンを落っことしかけた。
俺に恥をかかそうと、わざとズボンを下ろそうとする男の風上にも置けない不届き者まで現れる始末。
尻を半分出されたところで、こんなゴミ捨て場道場からオサラバしてやった。
次は、高校のクラブとしてはまだ数も少ないボクシング部へ向かう。
空手部での雪辱を晴らすため、俺は事前に動画研究もして、家の電気ヒモとも戦ってきた。
スポ根マンガよろしく、体格に恵まれなかった主人公のように並外れた跳躍とスピードで頂点を目指す。
はずが、油断した俺は腹に一発ブローを喰らって瞬殺ノックアウト。
腹は恐ろしく痛いし、食べた昼メシはゲーゲー吐くし、おまけにボクシングパンツを下ろされた。
かろうじてフルチンは回避したものの、空手部以上にアングラな雰囲気のボクシング部では、己の思う理想の鍛錬はできないだろうと、入部を断った。
そうして辿り着いたのが、この呪詛クラブ。
呪いは時として有効打になりそうだし、なにより、痛い目に遭うのも、恐ろしい目に遭うのも、これ以上恥を晒すのもごめんだった。
ここなら大して強そうなヤツはいないだろう。
呪いなんて研究しているような連中だ。
きっと暗くて地味なアホばかり。
そう、思ってたのに。
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