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「ちっちゃい。かわいい。ウチのマスコットですね」
「まさに、ウチに足りなかったのはこれだな」
「oh!soキュート、アンドプリティ!虫カゴに突っ込んで、隙間から全身ぺろぺろしてあげたいくらい」
目の前に立ちはだかるアルプス山脈のような巨体。
何を食べれば、空手部やボクシング部より、これほどまでにたくましくなるのか。
喉の奥でヒュウッと呼吸が鳴った。
「駄目だ、怯えている。可哀想だ。少し離れよう」
真ん中に立つメガネの男が両手をガバァッと広げ、他の二人と共に距離を取る。
その腕が部室の端から端まで届きそうな威圧感で、俺の体が縮み上がった。
「名前は。名前はなんと言う」
「はわ、はわわわ、はわわわわわ」
唇がはくはくと震え、声にならない。
膝が笑って逃げ出すこともできない。
「どうしたッ!名前を聞いている!」
「はひーッ!?は、はわ、こわこわ、こわ」
「ん?なんだって?」
「こわッ!顔、怖いッ!!」
失礼なセリフを口走るだけに留まらず、手に持っていたカバンをメガネへ放り投げる。
チャックが開きっぱなしになっていたせいで、教科書やマンガ、それから俺のバイブル、オシャレヤンキー雑誌『デッドロード』が飛び散った。
デッドロードがメガネの頬をビンタし、スローモーションのよう床にばさりと落ちる。
偶然開かれたページには、たった一言で相手をデッドロードに導くヤンキー語録が書かれていた。
「なにを…するんだ」
メガネの顔が強張る。
今となってはまさしく俺がデッドロード。
「なにを、するんだキミは!」
ぐわんぐわんと響く大きな声。
胸を反らしたメガネは、メガネのくせにジャイアントゴリラさながらの迫力で俺を見下ろした。
死んだ。これ、死んだ。
俺はこの後体に飛んでくるであろうパンチを受けるために、むむむむッと歯を食いしばった。
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