5 / 8

04

「そうだな。部長で3年の、玉木(たまき)東吾だ。好きな動物はネコ。趣味はネコモチーフの雑貨を集めること」  呪詛関係ない!  思わず立ち上がりツッコミを入れそうになる。 「私は大和(やまと)・ルイ・惣之助(そうのすけ)。クラスじゃイロモノ外国人なんて言われているけど、生粋のクォーターさ。もちろん英語はてんで喋れない。趣味はお菓子作りなんだけど、あ、お一つどうぞ」 惣之助の細く長い指が、ピンク色のハート型クッキーを俺の口元へと運んでくる。  有無を言わせぬその表情は、どこぞの国の王子のような雰囲気を漂わせていた。 「キュートなキャットボーイ。勝気そうなくりくりのツリ目がかわいいね。鼻はちょっと上向き気味だけど、完璧に整っていないところが、なおキュートッ!お口はぷりぷりピンクで、興奮するよお」  恐る恐るかぶりつくクッキー。  惣之助が、奥へ奥へとクッキーを押し込んで来る。  甘い。美味い。でも、怖い。  威圧感より狂気を感じる。  とんでもないところに足を踏み入れてしまった。  そう思うには、少しばかり遅かった気がする。 「東吾さんと惣之助さんは3年だが、俺は2年の大熊(おおくま)寅吉(とらきち)。1年とは校舎が一緒だから、これからいつでも会えるな」  これから、いつでも?  すぐさま、嫌だと叫び出したい。  でも、この人が一番悪人ヅラで、恐ろしかった。 「で、おまえは?」  寅吉に話を振られ、我に返る。  視線がいっきに俺に集中したようだった。 「あ、あ、俺、1年の、篠原天樹で、す」 「あまぎ。かわいい名前だ。名が体を表している」  東吾が頬をすり寄せてくる。  体を撫でられ、全身からトリハダが立った。 「天樹はどうしてウチに入ろうと思ったの?」  入ろう?入ろうとは微塵も思ってません。  むしろ何かの間違い、いや、手違いというか。 「ほらほら、正直に!」  勘違いというか。こんなはずでは、というか。 「だ、だって…」 「だって?」  三人の声が重なり合った。 「ぶ、文化部で一番弱そうだって思ったから!」  口元を押さえてももう遅い。  こぼれ出たのは、本心だった。

ともだちにシェアしよう!