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04
「そうだな。部長で3年の、玉木 東吾だ。好きな動物はネコ。趣味はネコモチーフの雑貨を集めること」
呪詛関係ない!
思わず立ち上がりツッコミを入れそうになる。
「私は大和 ・ルイ・惣之助 。クラスじゃイロモノ外国人なんて言われているけど、生粋のクォーターさ。もちろん英語はてんで喋れない。趣味はお菓子作りなんだけど、あ、お一つどうぞ」
惣之助の細く長い指が、ピンク色のハート型クッキーを俺の口元へと運んでくる。
有無を言わせぬその表情は、どこぞの国の王子のような雰囲気を漂わせていた。
「キュートなキャットボーイ。勝気そうなくりくりのツリ目がかわいいね。鼻はちょっと上向き気味だけど、完璧に整っていないところが、なおキュートッ!お口はぷりぷりピンクで、興奮するよお」
恐る恐るかぶりつくクッキー。
惣之助が、奥へ奥へとクッキーを押し込んで来る。
甘い。美味い。でも、怖い。
威圧感より狂気を感じる。
とんでもないところに足を踏み入れてしまった。
そう思うには、少しばかり遅かった気がする。
「東吾さんと惣之助さんは3年だが、俺は2年の大熊 寅吉 。1年とは校舎が一緒だから、これからいつでも会えるな」
これから、いつでも?
すぐさま、嫌だと叫び出したい。
でも、この人が一番悪人ヅラで、恐ろしかった。
「で、おまえは?」
寅吉に話を振られ、我に返る。
視線がいっきに俺に集中したようだった。
「あ、あ、俺、1年の、篠原天樹で、す」
「あまぎ。かわいい名前だ。名が体を表している」
東吾が頬をすり寄せてくる。
体を撫でられ、全身からトリハダが立った。
「天樹はどうしてウチに入ろうと思ったの?」
入ろう?入ろうとは微塵も思ってません。
むしろ何かの間違い、いや、手違いというか。
「ほらほら、正直に!」
勘違いというか。こんなはずでは、というか。
「だ、だって…」
「だって?」
三人の声が重なり合った。
「ぶ、文化部で一番弱そうだって思ったから!」
口元を押さえてももう遅い。
こぼれ出たのは、本心だった。
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