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第2話

「ご馳走さま!  仕事から帰って来たら大好きな先輩が居て、  暖かいお風呂とこーんな美味しいご飯が  あって、オレすっごく幸せです♡」 「それは良かった。僕も大好きな青桜(あお)に  喜んでもらって嬉しいよ。  でも、『先輩』じゃないだろ?」 僕と青桜は高校が同じで一個上の先輩だからね。 体育祭の色分けチームで同じになった事もある。 恋人と言う関係になる前に先輩後輩と言う関係が2年半も続いたから青桜は僕の事を『先輩』と呼んでいた。 学生時代は気にならなかった僕も、高校を卒業してからはもう先輩じゃない訳だから名前で呼んで欲しいと青桜に言ってみたものの、それからもう一年以上…青桜は未だにその呼び方に慣れる事が出来ないでいた。 僕の体に傷を作ったと言う負い目からか、青桜は僕への気の使い方は普段からとても過剰で、接し方も遠慮気味に見えた。 学生時代の青桜は1年生の頃こそ僕より背が小さくて活発ではあったけど、すこし癖のある黒髪に黒目がちのくりくりした瞳のどちらかと言うと女顔で可愛かった。 それでも高2になると背が伸びて、顔つきも少し精悍になってきた。 そうなると女子はすごいよねー サッカー部で目立っていたし、そもそも活発で明るく、しかも弟がいる所為か優しく面倒見もいい為、本当によくモテてよく告白されてるって噂も聞いた。 まぁ、僕もモテてたけど。 僕は入学当初から王子様みたいと周りの女子に騒がれて、それが鬱陶しくて元々父親の影響で始めていたギターをする為に入った軽音楽部の部室に常駐してるのかって思われる程逃げ込んでた。 まぁ、そこで1年の時、3年の先輩に喰われたんだけどね。 ぁー、勿論その時の相手は女子ねw 僕は色白で髪の色素も薄くて『儚く可憐な王子様』と目立ってた。 それでよく上級生にも絡まれてた。 まぁ、3年の先輩に喰われてからは安泰だったけど。 その3年の先輩が卒業の時に別れたくないって大泣きした時はホント、どん引きしたよね。 僕の事をそんなに好きだと思わなかったよ。 僕も体だけの関係だと思ってたから…あ、僕は、か。 2年に上がってからはやっぱり先輩に相手させられて、この時は同性の先輩だったんだけど、先輩同士で僕の取り合いでややこしい事になり始めて…あの事件が起こったんだよね。 思えばそこから青桜が朝も下校も僕にピッタリ張り付いて付き合ってくれたから先輩からの誘いも少なく無くなったし、やんちゃな先輩方の嫌がらせも無くなった。 まぁ、実はその裏で青桜が仲裁?に入ってくれたらしいけど。 実際、青桜は後輩と言うより僕の保護者的に学園内でも有名になっていたみたいだ。 僕の『ナイト』って影で騒がれてたって後に青桜が照れ臭そうに話してたっけ。 僕の為には積極的なのに、僕に対しては引っ込み思案? それって、僕、損してない? 僕は青桜の全部が知りたいんだ。 なんだけど…僕の前では青桜は凄く大人しいんだよね。 あ、決して暗いとか話さないとかじゃないんだけどね。 それに最近は軽口も使うし、睦言でも時々「好き」と言ってもらえる様になったもののその頻度はまだまだ少ない。 他に見せない顔を見せてくれてるのは嬉しいけど、他人に見せてる顔も見たい。 執着心のない僕は、青桜に関してだけは貪欲だ。 「ねぇ?いつまで『先輩』って呼び続けるの?」 「ぁ…」 青桜が顔を真っ赤にする。 青桜は僕の甘い声音に弱い。 「ふふ…青桜可愛いな。顔がトマトのよう  だよ」 「先ぱ…ぁ、ゅ (ゆう)さん…ど、どーしたの?  今日はなんかいつもと違いますよ?」 「んー。ちょっと思うところがあってね。  ほら、青桜はあんまり自分の性癖言わない  だろ?  だから、今日はその辺り、じっくり話し  合おうと思ってね」 「せ…性癖?!////」 目の前のイケメンはとてつもない美しい顔でとてつもなく優しい声音で青桜の心臓を凍りつかせた。 「あーお、僕とDom/Subユニバースごっこを  しようか」

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