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第6話
「青桜、『strip』」
心地よく撫でられていた手が離されcommandが青桜の耳に届く。
この目の前のイケメンは本当にDom性を持っているかの様に、さも我が王の様に、はたまた自分の事を所有物だと言わんばかりな声音で青桜に命じた。
青桜はピクリと反応し、優から少し離れて立ち上がる。
ゆっくり、焦らす様なスピードだったが、その実、焦らすような余裕は青桜にはなかった。
優の前で服を脱ぐ事に意識した事など青桜には無かった。
女の子じゃないし、同性だし、体育祭で何度も一緒に着替えもしたし、同居してるし、優の事務所が決まっても仕事が安定して入るまでは部屋の広さを重視した為家賃をやりくりする為、電気代を浮かせようと真夏に2人でパンツ一枚で窓全開でひと夏を越えたこともあるし、お風呂だって一緒に入った。
モデル業の衣装替えの時だって時間との勝負で時にはキチンとした控え室もなく雑多な場所で着替えていた事だって何度もある。
何より、目の前のこの美しく君臨する男は自分の最愛の恋人だ。
しかも…もう何年も目の前のこの男に肌を曝け出し、自分でも見た事がない場所までマジマジと見られ、触れられ翻弄されていた。
今更裸になる事なんて…どうってことない。
ない…はず、だった。
なのに…指が…手が震えてしまう…何故?
青桜は自分の理解が付いてこない自分の体の反応に戸惑っていた。
普段から青桜は優とのSEXに不満はなく、トロトロの快楽の沼に引きずり込まれる感覚に戸惑いと少しの恐怖を感じはするものの、『あの優』が自分なんかを抱いてくれると言うこと自体が至福としか思えなかった。
優は本人は気付いて居なかったが、高校の頃優には自校のみならず他校にまでファンクラブがある程の憧れの人だった。
見目麗しく、ミステリアス。
軽音楽部なのに文化祭には出る事はなく、
彼が歌う事も無かった。
歌手を目指してると言われてもピンとこなかった青桜も優に誘われて観に行ったライブハウスで歌う優を観て、その瞬間青桜の胸は鷲掴みされた。
恋に落ちたとはこの事だと思った。
美しいだけの王子様じゃなくてこの世に君臨する圧倒的強さを持つ王だった。
圧倒的な存在感にライブ後自分が泣いている事に気付かないほど青桜は優に魅了され、その姿を優に苦笑されても感動した事を何度も何度も優本人に語り尽くした。
そんな男が自分を好きになってくれて、女性なんか選り取り見取りなのに、自分と同じくらい…それ以上に体格が良くなってしまった自分を抱いてくれている事実を青桜はいつもうしろめたく感じていた。
だからどんな抱き方をされようが不満なんてなかった。
では、何故Dom/Sub系のストーリー物を好んで読むようになったか…それは世界観だった。
男と女に拘らず、信頼関係のみで構成され、国家レベルで承認されパートナーシップが取れる。
現実世界でもパートナーシップは取れる。
最近ではその辺りも比較的オープンになっては来たと思うが、それでも自分達がそれを望むにはまだまだハードルは高かった。
だからこそ憧れたのかもしれない。
お互いが存在してこそ成立する関係。
揺るがない絆。
なにより周りが祝福する社会。
SMのように支配して屈服させたいという欲望を優が自分に望むなら、甘んじて受け入れる気持ちはある。
ただ、青桜はマゾヒストではない。
青桜は純粋に優の役に立ちたいと心から願い、ずっと側に居たいと望んでいた。
故にMと言うよりはSubなのだ。
「ねぇ、青桜。焦らしすぎ。
もう少しスピードあげようか。
ああ、下着も脱ぐんだよ」
「?!」
「どうしたの?続けて。『strip』」
「…っ」
青桜は下着を床に手放し、生まれたままの姿で優の前に立つと視線は床に移し、その手はおずおずと前を隠していた。
「ん、いい子」
優は満足そうに優しく褒める
「青桜、可愛いよ。僕の青桜『come』」
自分だけが真っ裸の非日常な状況。
本当に自分はSubなのではないかと思うほど、青桜は優の言葉に操られていた。
優の『僕の青桜』と言う言葉にお腹の内からジンワリと溢れ出す暖かい疼き…
もじもじと身動ぎし始める青桜の腰を抱きしめムダ毛のない綺麗な下腹部に優はキスを落とす。
そのリップ音と優の唇の感触に青桜は腰を引きそうになる。
「青桜、『stay』だよ」
「…フッ」
青桜の息が上がる。
背中からみぞおちに優のしなやかな指が這う。
青桜は、優は本当のDomじゃないかとフワフワする頭で思っていた。
今日フラッと足を踏み入れた程度のこの目の前のオトコがどうしてこんなに完璧にcommandを使いこなせるのか不思議で仕方なかった。
この美しい最愛の男に躊躇なく跪き甘えて良い世界に青桜は心から憧れた。
でも、優は?
「青桜、『present』」
「!!?」
「あーお?」
ふあふあした感覚に意識を飛ばしそうになっていた青桜は息を飲んだ。
presentーーーそれは床に膝を付き、kneelの際の手を体の後ろにつく状態。体を少し反らせ腰を浮かせた状態をキープする姿勢。
無防備に一番大切な場所を晒す姿勢…
青桜の膝がカタカタと震えるのが分かる。
それでも青桜はゆっくり片膝づつ床に付き、kneelの女の子座りの状態から上体を背の方に倒すとくっと顔を反らしながら腕を背中の方に付き、膝をやや開いた状態を作ると自分の秘部を曝け出す。
可愛い…
「『good boy』。いい子だ。でも、僕の知っ
てるpresentはもう少し脚を開いていた
かな?」
青桜の体が優の言葉にビクンと跳ね。チラッと上目遣いで優の顔を盗み見る。
優は優しい笑顔を見せていた。
「青桜、僕の言う事をちゃんと聞けたら
いっぱい褒めてあげるよ? 青桜は僕に褒め
られたい?」
コクコク青桜が首を縦に振るのを見て僕の笑みが更に深まる。
可愛い
可愛い
可愛い
「青桜、『look』。僕の顔をちゃんと見ながら『present』だよ」
僕の甘い甘い声音に青桜の身体中の毛穴が粟立つのが分かった。
「偉いね、青桜。『good boy』。隠しておき
たい恥ずかしいところちゃんと見せてくれた
ね。すごく良い子だ。」
ゾクゾクと自分の神経が泡立つのが分かる。
僕はもっともっと青桜の色々な痴態を見たくなっていた。
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