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第8話

青桜(あお)は催眠術にでも掛かったように(すぐる)の言葉に心が満たされる自分を感じていた。 「…フフ。青桜、そんなに激しく腰振っちゃう  なんて…。ああ、どうしてこんなにトロトロ  になってるの?お腹にも飛び散ってるよ。  青桜、『lick』」 優は青桜の腹に飛び散る透明な先走りを指で救うと半開きの青桜の唇に塗る。 そして、軽く青桜の切なく震える幹を擦り上げ、コプリと溢れた先走りを指に絡めるとその口に差し込んでcommandを告げるのだった。 「ひッ!? あっ、あっ…ん、くちゅ、  じゅるるぅ…ちゅぅ、ちゅっ…はぁ…。  ゆ、(ゆう)さ んッ。前…もっと、触っ…欲しい」 「青桜、なんでお口お休みしてるの?  ダメ。悪い子には『お仕置き』だよ。  そうだな…青桜は僕の指を舐めて  何もないところに腰を振ってイクんだ。  自分で触るのも無しだよ…さぁ、やって」 余りにも一方的な優の言葉に青桜が異論を唱える。 「ぇ…? やっ、やだっ!だってオレ良い子に  してたっ  オレ、優さんの言う事聞いてたっ」 (すぐる)の「悪い子」の言葉に青桜の心にポッカリと喪失感が湧いた。普段の青桜ならこんなトリップの仕方はしないだろう。「またまた〜」と笑い飛ばして要領良く優に媚びる事も、ご機嫌をとる事も出来ていたかもしれない。ただ、今日は、『今』は違った…。 イヤイヤと首をふる。その潤んだオニキスの瞳からは大粒の涙が溢れる。先程までの蕩けた色を写した瞳はもうない。 「…あーお、言う事聞けないの?」 ビクッと体が震える。 ワントーン低い優の声が出て明らかに冷気を含んでいたからだ。 優の眼下で震える青桜は明らかにSubに成りきっている。 許してやっても良かった。むしろこれはごっこでありただのプレイなのだから…。 雑多にやっても問題のない話である。でも、優はそうはしなかった。 普段人前に立ち、自分を殺して生きている職業柄、普段抱える自分たちのストレスもハンパない。 それに加え、青桜は優の前でも自分を殺して優を一番に考えて生きている。 だから青桜のガス抜きにでもなればと思ったこのゲームだったが、思いのほか自分達にはハマり過ぎているのではなかろうか… このプレイ、役に入らなくても本来の自分で居られるのかもしれない…とも思う。 青桜が手放しで信頼を自分に向けて身を任せてくる姿に優の股間も膨らんでいた。 青桜の自分への愛情をどんどん試したい。 だったら本気でSubとしての青桜をDomの優として愛してやろう。 脳が芯から痺れてくるようだ。 その甘い痺れに優は酔いそうになる思考をなんとか保っていた。 青桜は…青桜はもっともっと溺れればいい。 Domの自分に全てを預けて快楽だけ追えばいい。 「さぁ、青桜。  青桜は『お仕置き』と『ご褒美』  どちらが好きかな?」 「くちゅ…くちゅ。あむ…っ。はぁ…はぁ…」 青桜は無駄に体力のある自分の体に感謝していた。 優との『Dom/Subユニバースごっこ』は未だ続いていたからだ。 欲しい…自分の全てを曝け出して 自分の全てを受け入れて欲しい 愛して欲しい (ゆう)先輩の全部が欲しい…っ もうどの位の時間が経過したかも分からない Dom/Sub…支配する・される関係。 一見エゴイスティックでサディスティックな暴力的な繋がりのように聞こえるがDom/Subユニバースは互いを尊重しあい、与えあうもの。

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