18 / 19

第18話

「先ぱ…ゆうさん、先寝ててくれれば良かった  のに…」 ペットボトルを渡す僕に申し訳無さそうに青桜がお礼を言う。 いつもは青桜をほっぽって先に寝ていた自分に居た堪れない。 『Dom/Subユニバースごっこ』をして色んな事に気づいたんだ。 「青桜こそ慣れないプレイに疲れただろ?  大丈夫?」 コクリと頷く青桜はお風呂上がりのせいもありいつも以上に真っ赤になっている。 ふふ…思い出して恥ずかしくなっちゃってるんだね、可愛い。 「ごめんね。中に2回も出しちゃって。  大丈夫だった?」 「うわっ?!////」 青桜がペットボトルを落としそうになる。 「ちょっ!先輩?!////」 …あ、ボトルキャップそんなに固く閉めなくても…フフッ。動揺しているのが分かる。 「あと…無理矢理お前の一番奥に入って  ごめん」 ゴトンッて今度はペットボトルか床に落ちた。 騒がしい子だね──フッ 「顔が真っ赤だ。可愛いな」 「ちょ…ホントに謝る気あるんですか?」 効果音を付けるなら『ぷんぷん』になるのかな…すこし不貞腐れて膨らんでる頬が本当に可愛い。 その頬に触れると青桜がくすぐった気に目を細める。 「オレのどこが可愛いんですっ?」 呆れてもそこは聞きたいんだ。青桜の反応が楽しすぎて今までピロートークを疎かにしていた事を悔いる。 呆れて聞いて来るところ悪いけど 「『全部』だよ」 落としてしまったペットボトルを拾って青桜の手を引く。 「お前はホント、人の話聞かないからね。  一度ゆっくり話さないといけないとは思って  いたんだけど…ねぇ?聞いてる?」 お口がぽかんと開いたままだよ…。 「青桜、ゴロンして」 「え?」 「膝枕してあげる」 「なっ!?////」 「いや?」 照れ臭そうに俯いてふるふると首を振る青桜が愛おしく、恐る恐る僕の膝枕との距離を測りながら体を倒してくる青桜の仕草が微笑ましい。 横になり、僕の膝に頬を付ける形で横になる青桜。 「ごめんね、硬いよね?…女の子の膝みたいに柔らかくないだろ?」 「オレ、膝枕されたのこれが初めてなんでよくわかりません。ただ、先輩の…ゆうさんの顔が見たいのに、凄く…照れ臭いっ」 縮こまって僕の膝に頭を載せてる青桜は両手で顔を隠している。 あ、だから横向きなのか… 「お母さんとかしてくれなかった?  もう──楽な姿勢になって良いよ。  膝枕は僕がさせてみたかっただけの事  だから。付き合ってくれて有難う」 「じゃあ…このまま、ゆうさんの方見て良いですか?」 「ん?どうぞ」 すぐ、「しまった」と思った。 「ちょっ、青桜っ腹に顔を押し付けない!  くはっ、くすぐったいっ!」 「さっきの、仕返しですっ」 青桜が僕の腰をホールドしてお腹に鼻先でぐりぐり擦り付いてくるものだからくすぐったくてジタバタもがき、散々笑い散らかして2人してソファに倒れ込んだ。 はー、笑った。あれだけエッチした後だと体もだるいんだけど、今はこの時間が愛おしい。 青桜も同じ気持ちなのか僕の腰を抱いたまま腹に頬を寄せるように抱きしめてくる。僕は青桜の僕より少し硬めの黒髪を漉くように撫でる。 「僕に撫でられるの好き?」 「……うん」 「そっか…気付いてあげれなくてごめんな。  あと…変態ちっくに抱いて、ごめん。  引いた…よね」 「…そんな事…ないです。オレも気持ちよく  なっちゃったし…」 「そうか…青桜は僕のdi」 「わーわーわーっ!そこは聞かないでっ////」 青桜が僕が何を言おうとしたか気付いて言葉を遮る様に手を伸ばして来たのでその手を笑いながら捕まえる。 「僕は、青桜にいつも我慢させていたのか  な?」 青桜の気持ちも聞かずに色々我慢を強いていたのだろうか? 「どうしたんですか?いきなり。  そんな事ないですよ」 「いつも、感謝してる。青桜の気遣いに、  青桜の行動力に、青桜の優しさに、青桜の  笑顔に…」 青桜は驚いた顔で僕を見上げていたが、すぐに嬉しそうに頬を(ほころ)ばせ又僕の腰に頬を寄せ、抱きついてきた。 「青桜、もっと僕に甘えて。あんまり頼りに  ならないかもしれないけど、僕はお前を  甘やかせたい」 「オレはいつも(ゆう)さんに甘えてるよ。  美味しいごはん作ってもらって掃除して  もらって…何より、側に居させて貰ってる」 「…青桜、またDom/Subごっこしよう」 青桜は僕の腹に埋めていた顔を離して見上げてきた。 「次はもっと上手く出来ると思うから。  青桜の色んな顔が見れて楽しかった…。  本当に…可愛いかった…」 青桜がゆっくりと首をふる 「アレは確かにオレの興味を満たしてくれる  ものだけど、ホントは優先輩が本当はどう  やってオレを抱きたいかを知りたくて…  優さんならオレにどんな事をさせて、どんな  風に抱いてくれるんだろうって…いつも、  オレの事ばかり考え抱いてくれてるのは…  分かってたから」 僕の手を…指を絡めて握り返し口付けを落とす。 こんな仕草も出来るんだ。…カッコいいな。 「オレが可愛いって言われたくて昔みたいな  扱いされたいの気遣ってくれてるのは分かっ  たから…オレもう体も優先輩より大きくなっ  たし、多少の無理も効くし…ただ、小さい方  が…いいだろうから…無理に抱いてもら…  て…もうし…わけ、なくてっヒック…少し、  でも…ヒクッ、好きに…抱いて…ほし…うぅっ」 は?なに?何が起こったの? 何でいきなり泣き出した? 「ちょ、青桜?またなんか1人で妄想して、  ハマった?」 「も、妄想って…ヒック、ひど…ふぇっ」 青桜がダーッという効果音が似合いそうな泣き顔になっていた。 「…(´゚艸゚)∴ブッ」 やば…笑ってしまった。コホンッと咳払いをして仕切り直す。 「あーお、よく聞いて。  僕は何も無理なんかしてないよ?  青桜は僕が太ったりハゲたりしたら僕を捨て  る気?」 青桜が想像したのか一緒眉を寄せた表情をしたけど直ぐに首を横に振る。 「僕もそうだよ。  世の中の男女だって、夫婦だってそこは同じ  だろ?  永く同じ時間を歩めば、そのうち僕らだって  老いてくるだろうし、顔だって変わって  くる。勿論体型だって…」 青桜がハッとした顔をしてその瞳がまた潤む。 キスしてやりたいが、残念ながら僕の体はそんなに柔らかくないので、   「ね?それに僕は青桜の顔が潰れようが  手足がもげようが気にしない。青桜が青桜で  あればそれで良いんだよ。  寧ろ、そうなっても僕だけの青桜になるって  喜んでしまうかもしれない。  僕がずっと身の回りの世話をしてあげる。  朝ちゃんと起こしてあげて、歯を磨いて  顔を洗って髭も剃ってあげる。  ご飯もちゃんと3食全部作ってあげるよ。  お前の体の中に入る物は僕が手ずから作った  ものだけに…と、ぁ…まぁ、僕は青桜が  思っているほど、綺麗な心もしてないし、  どっちかって言うとサイコパスだよ…」 気持ち悪いだろ… 一気に捲し立てる様に青桜に向けた言葉は僕のまごう事なき本心だ。 本心とはいえ、言い過ぎてる自分に気付き昂りかけた感情を押し殺す…には遅過ぎて…今まで我慢して来た本音をこんな形で伝えるなんて…最後の言葉は掠れていた…。 でも、今このタイミングしか無い気もした。 あんなに、ゆっくり時間を設けて優しく伝えていこうと思った言葉達は(なり)をひそめ、性格異端者か猟奇殺人者になりかねない言葉を吐いた事に頭痛を覚えた。 お互いにだんまり状態になる…沈黙が重くて痛い。 何か話さないと…と身じろぎしたところで青桜が勢い良く起き上がった。 流石の腹筋力だね…。 「えと…ゆう…さん…ううん、(すぐる)さんは  オレの容姿とかじゃ無く、オレ自身を…  す、好きなんだって思って、良いって事?  寧ろ、魂から愛してる的な?!」 ごめんね、青桜。僕は魂の存在はあまり信じてないんだよ。まぁ、歌詞には夢と希望を詰め込まないといけない時も有るからそこは使い分けてるけどね。 「まぁ、青桜の皮を被ったマネージャーより  マネージャーの皮を被った青桜の方が  抱けるかな」 …なに、その苦虫噛んだような顔は。  ちなみにマネージャーとは僕のマネージャーの事。 かなりポヨンポヨンの太っちょさん。 いつもはぁはぁ言ってる。元々のマネージャーが産休に入ったから新しい人が決まるまでの繋ぎ。僕は彼でも良いと言ってるんだけど、仕事が出来無さ過ぎて社長が切れそうになっていた。 前の女性は敏腕だったからねぇ。ギリギリまで僕の世話もしてくれたし…とまぁ、こんな話はどっちでも良い事だけど 「ねぇ、ゆうさん。やっぱオレ優さんの  マネージャーしたらダメかな?」 「学生が何言ってるの」 「学校なら辞める」 「…お前、僕の渾身の告白聞いといて、なんで  そっちに話を振るんだ」 青桜が僕を抱きしめる。 「…ただの嫉妬」 少し驚いた…。嫉妬してくれるの? 嬉しくなってその肩から腕を撫でる。 「ぼくはこの筋肉質な腕も好きだよ」 「も?」 「が!」 ふふふ… 「「はははっ」」 「ちょっ、優さん笑いすぎ!」 「お前だって笑ってるだろ!  ホント…可愛いな、青桜は。  僕は拘りが無い分執着はしない。  ただ、一度自分の物だと思ったらそれが  他人から見た時にどれだけヨレヨレで汚く  なろうが関係ないんだ。  上手い表現が見つからなくて悪いけど、  僕は青桜が好きだよ。  親や兄弟よりずっと好きだ。側に置いておき  たい。離してやる気もない。  それに…このお前の張りのある筋肉質の  胸や、時々遠慮がちに抱きしめてくる逞しい  腕が好きなんだ。」 「なんだか…表現は微妙だけど…嬉しいっス」 「僕の渾身のピロートークにそんな感想とは  酷いな…」 「ピロートーク…のつもりだったんですか?」 ピロートークなんて青桜と付き合う前もしたことなかったし、青桜とも特にした覚えはなかった。 やはり、変だったかな? 「自分を振り返ってみたら意外と酷いやつか  もと自戒の念に苛まれてね」 「オレ、充分甘やかして貰ってますよ」 「でも、僕はそれ以上に甘やかされてる」 青桜は今はモデルをやってるけど、役者も目指してる。この子は計画性のある子で、段取りを熟考して準備し、進んで行く子だと知っている。 本当になりたいものがあったのに、それを諦め違う目標をたてた。僕の存在が都度その計画を大きく変える事に、この目の前の男はなんの躊躇もしない…。 その気持ちだけで僕は充分満たされる。 なのに僕はお前に何も返していない…。 「青桜…お前は本当に男前だよ」 「ぇ???」 「ねぇ、青桜。僕を抱いて」 「えぇええ!?いきなり、何?!」 「傷付くな…そんな驚くことないだろ?  僕もうおっさん?こんな体抱きたくない?」 「ちょ?ゆうさん、落ち着いて!なんで?!  どんな流れ?!!」 (しな)を作る僕を拒否るなんて中々やるね。 「役者になりたいんなら濡れ場だって今後  お前だったら要望が入るだろ。  その時の為だと思えば良い」 「そんな…すんごい先の話じゃないですかっ  それに、わざわざしなくても何とかなり  ますよ」 「僕は、お前が他の女の子で練習したり、  お前の初めてがどこの馬の骨だかもわから  ない様な女である事が許せないんだって…  って、今思った。」 「ちょっ!ナニそれ。どこでそうなったのっ?  …熱烈すぎて…オレ、頭溶けそうですよ…  っ////」 「溶けてしまえ、そうしたら僕が全部掬って  飲んでやる」 「ぇ、嫌ですよっ、それだと出ちゃうじゃない  ですかっ!」 「「…プッ はははははっ」」 2人して大笑いして、寝室までキスし合いながら移動して青桜が僕に覆い被さるようにベッドに傾れ込む。 瞳を絡ませると、その大きな手が頬を捉え そっと僕の頬や額、首筋に口付けを落としていく。 神聖なものに触れる儀式の様なこの手順は そう…僕が初めてお前を抱いた時と同じだね。 どちらかとなく唇を合わす。 「瞳は閉じるものがセオリーなんじゃ?」 「…そうだったね」 ゆっくりと瞳を閉じて身を委ねる。 それは初めての時、何も知らない彼に言った僕の言葉。 やっと心の位置がそろった気がする。 まだまだ僕らは始まったばかりだ。 少しずつ自分たちの形を見つければいい。 またお前を不安にさせる事が有るかもだけど この手を離す気は僕にはない。 「ねぇ、ゆうさん。好きっ、ホントに好き  です…」 「知ってる」 ばふっと青桜が布団に沈む。 「キュン死しそ…」 「はは、それはダメ。  …続きは?もうおわり?」 「続きは、『おいおい』でお願いします////」 「そう?」 青桜の形の良い頭を撫でてやる。 体の関係はあったけど…こういう些細なスキンシップしてこなかった事を今更ながらに後悔する。 「いつか、先輩の事抱きしめて…今の先輩  みたいに先輩の事…撫でていい?」 「ああ、勿論。  僕は可愛い青桜も好きだけど、  カッコいい青桜も大好きなんだ。」 「オレ、カッコいい?」 「なに?モデルしといて自覚ないのか?」 「だって…」 「青桜がいつまでも僕だけの青桜でいてくれる  のかが目下僕の一番の不安だよ」 「な…デレ期到来?何かのフラグですかっ」 「お前が思ってる以上に僕はお前の事を思って  るって、どう言ったら伝わるんだろうね」 ため息を吐きつつ僕は彼の踏んづけてる布団を引き抜く。 ゴロリとマンガの様に青桜がベッド下に転がり落ちる。 「うわっ、今度はツンデレ?!ひどっ  オレも布団入れて下さいよっ」 お前、そんな大根で役者になれるのか? 「敬語、辞めたらね」 視線を逸らしため息をもらす。 可愛い仔犬はいつ狼になってくれることやら クイっと顎を取られ不覚にも驚いた。 「…ん。オレも入れろよ…な?」 ナニ、その雄感… ちょっとトキメいたかも。 フフフッ 僕はお腹が捩れるかと思うほど大笑いした。 眉尻を困った様に下げて不安気な仔犬の様だ。 あー、いつかこの仔犬に僕は抱かれるんだろうな。 「青桜、おいで」 布団を広げ招き入れ抱きしめる 「青桜、誰よりもお前を愛してる」 驚いた顔をして泣きそうに笑い、どちらからともなく口付けを交わす。 きっと僕らに永遠は訪れる。 大好きだよ、あお──。 END +++++++++++++++++++++      ご挨拶 +++++++++++++++++++++ 長らくお付き合い頂き有難うございました。 ちと、拗らせ感もあった2人ですが、 人の機微に気付かない奴が言葉が少なくてはもっと分かり合えないだろうと、『気持ちを伝える』をテーマにしてみましたが、(すぐる)ってば性格がアレなもんだから、そのまま行くと帰ってこれないという…Σ(ノ∀`*)ペチ orz この話の青桜sideも書こうとかと思いましたが エッチもないのにくどくなるかと思い辞めましたΣ(ノ∀`*)ペチ 誤字脱字修正は時々いれます。 読み難くて申し訳ありませんm(。_。;))m この話が暇つぶしにでもなれば幸いです。 表紙は優のイメージです。 青桜は王子様王子様言っていますが、顔は王子でも格好は至って普通ですw 持ち物に頓着しないので。 青桜は靴が好き。 Dr.マー○ンとか、ブーツ系好きですね。 表紙の靴も青桜からのプレゼント♪ 何なら、青桜の学生時代の私服を勝手に着たりもしますw(表紙の服も然り!www) なんて、裏設定があったりしたのでしたw では、本当にお付き合い頂き有難うございました。

ともだちにシェアしよう!