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◆2 ep.1(前) 受が子供を欲しがる話

今の生活に不満は無いけど、いつだって不安だらけで子供でも居たら変わるのかなとはよく思う。ぬいぐるみみたくフワフワで、かわいいだけの愛らしい存在。 やっぱり毛並みは金が良い。あの人が褒めてくれる色。 「・・・ルー、ルゥ!パパだ!」 「パパがかえってきた!」 「え?ん・・・、早くない?」 「はやくない!おそい!」 「何日もかえってこなかったじゃん!」 「ぱぱ・・・?」 子守りをしていたはずが、いつの間にかぼくは一番下の子を抱いたままうたた寝してしまっていた。子供たちが気付いたきっかけだろう、独特なエンジン音のジルの車が確かに玄関先に止まっていて、ビターチョコレート、ブラウンシュガーに、僕の手を離れて混ざったストロベリーミルク、子供たちは扉の前を陣取って、ぼくは散らかしたおもちゃを拾って片付けて、そう間を置かずにジルが入ってきた。 「リュカ!お前の方が美人だった!」 「子供たちがあなたの帰りを待ってたんだけど。」 機嫌良くぼくを熱烈に抱きしめたジルに催促される前に、ぼくは背伸びして、ジルの頬に口付けた。すると満足した表情でぼくから離れ、足元の子供たちの頭を撫で、お菓子を配り出す。 子供たちには色とりどりのキャンディとバターサブレとミルクチョコレートをあげて、ぼくはボンボンショコラをもらった。 それから二つ、ぼくにくれたのと同等の、きれいにラッピングされた箱を取り出した。 「チビ達、これはママの分だ。そっと届けて、ケイティにお茶を淹れてもらえ。」 「わかった!」 「わかった!」 そうだ、レイラは月のもので調子が悪いし、アメリアは買い物に出ていて日暮れまで帰ってこない。ジルにも帰宅と同時に伝わってるだろう事情により、今この人の相手を出来るのはぼくしか居ない訳だ。 幼い子供たちは単純で、三人揃って部屋を飛び出していったものの、ぼくはジルから受け取ったジャケットを掛けて、ポンと渡されたタイの結び目を解いたりしていると云うのに、抱き寄せられて邪魔される。 レイラが気に入ってるブランドの、洒落たデザインの服の複雑な紐飾りをするする解く音がする。 「エドガーの所のもお前と同じだし、話が合うかもな。」 「うん。あちらが良いなら、話してはみたいけど・・っ、ん・・、」 そういえばエドガーに買われたオメガを見てから帰ってきたんだっけ。でもぼくは人付き合いが苦手だし、あちらは貴族出で教養もあるだろうから、出自が知れないぼくとなんて話してくれるんだろうか、とか色々考えようとしてるのに、胸を掴まれたりその先を摘まれたり、お尻の合間を撫でられたりの準備されながらだと全然頭が回らない。下着をずらされ、くちゅくちゅ水音も聞こえてくる。ジルに触られるのを喜んで。 「リュカ、脚を拡げろ。・・・うん、そのままだ。」 奥までは入ってこなかった指を抜かれ、ぼくは窓を背に、机の上に出来るだけ開脚して座らされた。ボンボンショコラに巻かれていたグラデーションの美しいリボンを、きゅ、と緩く勃ち上がった人のモノにきつく結んで。 ジルはあまり、前では感じさせてくれない。 中だけで達する方が具合が良いからと云って。 「んっ、・・っあ、ん・・・、」 「もういいな。」 愛液に潤滑油を足され、指で中の具合をもう一度確かめられる。あまり慣らされない内に促されて、ジルの首に両腕を回すと、両足を抱え上げられて熱いジルのが、少しだけ開いた場所にツンと触れた。 「は、あっ・・、あ・・!」 浮いた身体を揺さぶられる度、ペニスが奥へ、奥へと入ってくる。ジルのは大きいから始めは苦しいけど、ちゃんと身体はやり方を思い出してすぐに気持ち良くなってくる。密着したジルの、コロンと体臭にやらしい匂いが混じってくるのに反応してしまいながら、中を突き上げられて、自分もジルのも濡れてくる。 この、セックスでしか味わえない、身体も精神的にもジルと混ざり合いながらぐちゃぐちゃになる感覚はすごい。 「っん、っ、あ、あっ、」 射精しそうなジルに合わせて突き上げられてもリボンの所為で上手くいけなくて、ただ、ぎゅうと中が締まってジルの射精を早めただけだった。 奥に吐き出されながら中で脈打つ感覚に耐えられなくて抱きつくと、うなじを舐められる。少し左側、ジルの歯型に沿って凹んだ派手な噛み跡の辺りだ。ジルの鋭い歯が当たる感触もする。 ジルの好きなように揺さぶられながら、ぼくはこの後に備えて、ぎゅう、とジルに抱きつく腕に力を込めた。 「コラ、首は絞めるなよ。中だけにしろ。」 「ん・・、っ・・・、」 頑張って少し腕だけ緩めたけど、痛いのは苦手だ。一生消えない跡の上にまた新しい噛み跡が付く。思いっきり噛まれた痛みと、気持ちのいい場所を抉られる快感が混ざり合う。 続けられる首の甘噛みとたまに当たる歯、奥になすり付けるような腰の動きの所為で、ぼくもぶるぶると、中だけで達していた。 「まぁた派手にやられたわね。」 アメリアの声、首の冷たい感覚と消毒液の独特の匂いで目が覚めた。 まだ散らかってる寝室、ジルの腕。ジルが満足するまで相手をしたら指一本動かすのだって嫌になり、べとべとの身体を洗ってもらった辺りは何となく覚えてる。 何度か噛まれた首からは出血してたし、ジルはこまかい手当ては苦手だからアメリアを呼んだらしい。 「ありがと。」 「ルゥ、夕飯食べれそう?」 「うん・・・。」 「ジル、連れていって。」 「ああ。」 アメリアに促されたジルに抱き上げられると、食欲より眠気が完全に勝っているのが分かった。動くのが少し楽な服に着替えられたし、セックスするのは満足感があるけど疲れるし。それにちゃんと抱き上げられるの、久しぶりで気持ちがいい。 「リュカ、寝るんじゃないぞ。」 「うん・・・。今日、パーティかな。」 「ああ。その後はチビ共を寝かしつけろだと。」 「じゃあ手伝うね。」 子供たちは久しぶりのパパに興奮して、きっと寝付きが悪くなる。アメリアに寝室の片付けまでさせちゃったし、レイラは寝て過ごしたい体調だろうし、ぼくも出来る事をしたい。 ジルと番のオメガはこの家に三人居る。レイラ、アメリア、ぼくだ。ジルの子供も三人居て、上と下がレイラとの子、真ん中がアメリアとの子で、ぼくはよく子守りをしている。子供たちは皆まだ小さくて、ぼくに懐いてくれててかわいい。 でも、ぼくだけ血の繋がった家族を作れないでいるのがたまに引っ掛かって、しばらく悩む事がある。この家はたくさんの温かいものがあふれてて、満ち足りた日々の筈なのに。 ジルはぼくの神様みたいな人だ。もう十年以上前だけれど、初めて会った日のことは今でもよく覚えてる。見た目も、多分中身もボロボロだった僕をひょいと抱き上げて、大きくて恐い顔をした黒い毛のオオカミは自信に満ちた表情で云ったのだ。 『お前は将来美人になるのに、こんな所に居るのは勿体無いな。』 その頃、金物屋で下働きをしていて、髪が肩まで伸ばしっぱなしだったぼくは、完全に女の子に間違えられてジルに買い取られた。 きれいなものや美しいものは好きだけど、子供に性的な興味が無いジルはぼくが男体でもちゃんと面倒を見てくれ、ぼくより前からジルの傍に居るレイラも、後から来たアメリアもぼくのことを可愛がってくれた。 ジルが好きなのは女の人だと分かってる。ぼくがまだオメガだと判ってなかった小さな頃は、女の体は柔らかくていいぞとかぼく相手でもよく云ってた。でも、男体でもジルの役に立てる存在でありたい。 レイラは家の中の事だけじゃなく、この地区のオメガの取りまとめ役もやってるし、アメリアはジルと一緒に働いてて、買い付けなんかも行ったりしてる。二人ともちゃんと役割を持っているのに、ぼくだけただのオメガでしかない。 金髪に翠の瞳、派手な顔立ちと、見た目はジルの好みで良かったと思ってるけどジルの歓ばせ方は今だによく分からないし、ジルは自分の帰りをただ待っていればいいと云ってくれ、その言葉に嘘や慰めは混じっていないのも分かっているけど、それだけじゃ駄目だと思う。 大きな家にフカフカな毛布、美味しいご飯や珍しいお菓子も好きなだけ食べられる。優しい人たちに囲まれて、普通よりずっと良い暮らしをさせてもらっている。 そんな恵まれた環境に置いてもらえてるのに何も返せない。だからせめて子供くらいと夢に見たりするのだろう。オオカミ種は数が少ない方だし、たくさん子供が居たって困らないと思うから。 「でもエドガーを見る目が変わるわね。」 「アタシも。ルゥより年下かぁ。」 そう溜息を吐き、アメリアはぼくの頬を軽く引っ張った。アメリア、十代の頃の肌に戻りたいって色々試してるからな。ぼくは多分18にはなっていて、よく寝てるし、アメリアやレイラが色々お手入れ用品とかも手配してくれるので、肌の調子は良い。 それより本当、エドガーは口数が少ないし、何を考えてるか表情とかからも分からなくて怖いから一緒に暮らすのは大変そうだ。 ただでさえヒートを迎えたばかりの子って抱かれ慣れてなかったり、引き取られてすぐだと急な環境の変化だってあるのに。 何もしてあげられないけど、機会があったら話してみたい。花でいっぱいの庭でレイラとアメリアと三人で、昼食前のお茶をしながらぼくはそう思った。 「で、ジルはまだ可愛らしい年頃の子に下着をプレゼントしようって?」 「ええ。むしゃぶり付きたくなるヤツで、サイズはこの辺ですって。」 「エドガーに怒られるんじゃない?」 「土地の買い取り契約、済んだんでしょう?怒られても大丈夫よ。」 「まぁねぇ。」 うちの新作カタログを覗くと、ぼくだったら恥ずかしいなと思う、露出とレースが多いデザインだらけだった。割とジルの趣味みたいなやつ。まぁぼくだってジルとアメリアの見立ての衣類がほとんどだから、渡されたら着るんだけど。 「色はやっぱり会ってから決めたいなぁ。エドガーに買い取りの事で訊きたい事もあるし、ついでに会ってきていい?」 「いいわよ。 ちゃんとした贈り物は済んでるし、これはおまけだしね。リュカも行ってきて頂戴。」 「え。レイラじゃなくて?」 「この辺に男体はあまり居ないでしょう?番の種も一緒だし、貴方が一番年も近いわ。」 そんなこと云って穏やかに笑うレイラなんて、そういう違いがあっても上手く付き合える性質なんだけど、顔色は少し悪いままだし、無理をさせる訳にいかない。 確かにぼくもエドガーの家の子に会ってみたいとは思ったし、頷いておいた。 「最近エドガーも買ってくれてるし、催淫薬も付けた方がいいかしら?あんまり使われるのも気の毒だから弱めのやつ。」 「ジルが結構持ち出してて在庫少ないわよ。発注しとく。」 「やだ。リュカ、盛られてない?」 「緑の瓶までなら。」 「何でも許すのはダメよ。また首も噛ませたんでしょう、」 ぼくの首のガーゼを見ながらそう云われてしまったものの、男体だからか濡れ辛いって云われてるし、ぼくはジルの所有物だと思ってるし、痛い事はその程度しかされてないから、気にしてないんだけれど。 番だからといって全てを明け渡さなくていいし、受け入れなくていいのよと困ったような表情でレイラに云われたことがあるけど、ぼくは引け目だらけで無理だ。 そしてそこまで口にしたくないし、分かってもらいたい訳でも無いから、お小言が続きそうだなって思った時、子供たちのにぎやかな高い声が聞こえてきた。 「お前たちは今日も美しいな。」 子供たちを肩や腕にまとわり付かせながら一緒にやってきたジルは目を細めて、いつも通り、挨拶代わりの言葉をぼくたちに向けた。 「子供たちと中で遊んでてって云ったのに。」 「ついでにリュカの分も頼んでおいてくれ。これとこれが良い。」 「ルゥならエメラルドも良いんじゃない?」 「ライラックの方が色気がある。」 「そうねぇ。レモン色も良いけど・・・。」 早速相槌を打ち辛い話題になったのでぼくは子供たちと遊ぶことにする。 ジルも3人まとめて相手するのに昨日の夜同様疲れてきたから外に連れてきちゃったんだろうし。 ジルは元々の趣味と職業柄だろうけど、女の人は自分のものについてじゃなくても買い物全般が好きな気がする。だからぼくは二人と少し離れた年齢の所為じゃなく、考え方の違いとか、多分肉体性別の違いで分からない部分がある。 そういえば子供も居るのに二人とも結婚とか嫌がってたし。数年前、多重婚も可能だし、税金対策とかでまとめて籍を入れるかと云う話になった時、レイラはそんな今更と云って、アメリアは所有物になる気は無いわよと蹴って、それっきりになってしまった。まぁ結婚に嫌な思い出とかがあるのかも知れない。 ぼくらはこの家に来るまでの話を殆どした事が無いからほんとの所は分からないけど、オメガだとヒトばかりの地域で暮らしていたとしても碌な目に遭ってないという事は何となく分かる。 「そうだ、ルゥ、そんなすぐにエドガーに約束取り付けられないだろうし、午後はモデルしてよ。ジルが色々買ってきたから。」 「分かった。」 返事をして、アメリアの子と一緒に転がっていた草むらから起き上がりながら、首以外の見える場所に何か跡は付いてなかったっけと考えた。まぁいいや、付いてたら誤魔化してもらえば。 モデルは男体オメガを所有してる人に配る用の、新作洋服カタログの一部を撮るだけだろうから大した量じゃないし、ジルが満足する出来であればそれでいい。 本当、ぼくってジルのことばかりだ。番を飾り立てるのが好きで、美しく、大人しくしていれば喜んでくれるジルの望むがままでありたいと思うのに。 「これ、派手じゃない?」 「ジルが貴方にって買ってきたのよ。似合うわ!」 「アメリアも新しいスカートだね。」 「そう!珍しくオレンジなの。」 くるりとその場で回った、昼食前とは違うアメリアの好きな色のスカートは褐色の肌に映える色合いで、形も柄もよく似合っていた。 自分の事はよく分からないけど、やっぱりちゃんとジルはそれぞれに似合う服を買ってきてくれるんだよなぁ。ぼくに買ってきてくれる服は肩とか背中が出てたり、女物ぽかったりしてちょっと落ち着かないデザインのが多いんだけど、アメリアやレイラの感想を信じるしか無い。 カタログ用の撮影も終わり、ジルの休憩がてら見せてきてあげてと、アメリアに撮ったばかりの写真を渡され、ジルに持っていくと、僕の格好を見て満足げに頷いてくれたし、皆の見る目にやっぱり、間違いは無いから。 「やっぱりお前は白も似合うな。」 「仕事、大変なの?」 「そこそこ溜まってはいる。」 そう云いながらジルはぼくを膝に座らせ、机に広がる書類を雑に寄せて、ぼくが渡した写真を並べた。ぼくはさっき着替えたばかりの、アメリア伝てに渡されたワンピースみたいな服と、1枚の写真を見比べてみた。 「これ、この服に似てるね。」 「同じシリーズだからな。こっちはお前に着せたかったから販売は止めた一点モノだ。」 ジルはヒト用を中心に洋服や小物の販売をしている。余所から仕入れたり、うちで作ったり、手広くやってるけど、そんな調子で大丈夫かなと思わなくもない。 でも特別扱いが嬉しかったし、ぼくは商売については全然分からないので余計な口は出さない事にしてる。 ただ、この家の使用人もお店の従業員も、種族を問わず、ジルに拾われたり引き抜かれてやって来た人が多い。皆に慕われてるから、出張から戻ってきたら昨日の夜みたいに盛大に祝われたりで、昔みたいに二人で話せる時間も減ったし、仕事も年々忙しくなってる気がするから、もう少しこうやって仕事しながらでもいいから家に居て欲しいなとも思う。 ぼくたちがヒートの時とかはちゃんと覚えてて帰ってきてくれるけれど、なんか、それだけじゃなくて。 「っ、ジル、解けちゃう、」 「息抜きくらいいいだろ。」 もう少し考えたらずっと続いてる胸の中のモヤモヤの理由も少しは分かるかと思ったのに、裾を捲り上げて、下着の紐を片方解かれて、机に腹ばいにさせられる。 手紙をまとめて結んでた紐をぎゅっとぼくの根元で結んで、また催淫薬混じりの潤滑油、微妙な強さの緑の瓶。 「んっ、あ、ん・・・、」 レイラは暫く応じられない状態だし、ジルが戻ったからアメリアも忙しくなった。昨日も沢山したのに傍に居るとまた抱かれたくなってくるの、ばれてるんだと思う。 珍しくゆっくり指を出し入れされ、たまらずお尻を振る。塗られた薬の量は少なめなのに、水音が大きくなっていく。自分じゃ届かない気持ちいい場所に指がこしょこしょと、くすぐるみたいに当たる。 「あっ、んっ、はぁ・・・。」 「お前は此所が好きだったな。ほら、いけ。」 腰を掴まれて、一気に挿れられて、思いきり突かれた奥が気持ちいい。 ジルの形を感じながら、足が床から離れても揺さぶられ続けて、何度も気持ち良くなってるのに、胸全体も揉まれて、紐で締め付けられてる前も弄られて、ぼくの顔を覗き込んで。 「今日は割に濡れてるな。・・・でも顔は変わらないか、」 「か、お・・・?」 「悦くなってても表情が暗い。余所のオメガが気になるか?」 「ちがっ、うんだけど、っ、ん・・・!」 ちゃんとぼくのこと、気に掛けてくれてるし、気持ち良いセックスだってしてもらえてるんだから、オメガとしてもぼくは十分幸せなんだと思う。 でも、まだ足りないだなんて。大事にしてもらえてるのに足りないと思うなんて。 ぱちゅぱちゅと奥を突くのを止めないくせに、ぼくの表情を気にして身体をひっくり返されて。ぼくはジルの顔なんて見れず、首に手を伸ばして耳元で伝えてみた。 「ね、ジル、赤ちゃん欲しい、」 「・・・・・・。」 さすがにジルの動きが止まって、溜息を吐かれてしまった。ジルは椅子に座り、ぼくも萎えてはいないものの上に座る。あ、身体は触ってくれる。胸から下に、身体をなぞられるとぼくの口からも溜息みたいのがこぼれた。 「レイラがジーノを産んだ時、危なかったのを覚えてるか?」 「・・・でも、ぼくはレイラじゃないから。」 こういう物云いは怒られるかな、と思ったけど口にしてしまった。ジルがぼくに子供を望まない理由は予想が付いてたから。 末っ子は難産だったこと、ジルのお母さんは低年齢出産で亡くなってること、そもそも子供はもう欲しくないのかもって。 ジルはぼくの返事に怒ったような顔をしたものの、諦めたのか、ただぼくのお腹を撫でた。 「お前も興奮してるみたいだからな。孕みたくもなるか。」 「違く、て、・・・んっ、ぁん、っ、」 ぼくはきっと、確かなものが欲しい。ちゃんと形に残るもの。ジルにとってもぼくにとっても仕方なくとかじゃなくて、ちゃんと自分で選んだもの。 でもぼく自身上手く云えないし、今はただ、ズンと突き上げられるの、気持ちいい。 もうぼくと話す気が無いジルがまた動き始めて、ぼくはただ、気持ちいいと伝える声を出すことしか出来なくなった。 ジルはぼくの腰を掴んで抱き寄せてくれたけど、熱に浮かされているぼくとは違い、突き上げられながら聞こえたのは冷たい声だった。 「リュカ、何が変わるか試してみたらいい。」

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