4 / 17
◆1 ep.4 夜のいちゃいちゃ
「一人目にまだ子供で、しかも育ちの良い奴を選ぶと云う事なんて聞かないだろ。せめてもうちょっと育たないと。」
「まぁ、そうかもな。」
「いや、お前の所は育ってもダメかもな。エリは頑固そうだ。」
ジルは、うちのは聞き分けがいいと云わんばかりの、勝ち誇った顔をした。ジルの所は穏やかな気質のレイラがまとめている事もあり、番のバランスは良さそうだが、アメリアは下手な男よりも強い性格、リュカは幼い時から傍に置いていた所為もあり、そこそこ振り回されているのを知っている。
まぁジルは番をかなり自由にさせているから想定の範囲内だろうし、支配するつもりが無ければそんなものだろう。
エリだって従順であろうとしているが、そうでもない。ジルの所と同じようなものだ。
でもエリは公私を使い分けられるし、私の事を好いてくれてもいるので、それでいい。一族の親睦会と云うこの場でも自分より上手く立ち回っているから上等だ。
「ジル、リュカが絡まれてるぞ。」
「ったくアイツは隙だらけだな。」
「お前が主催だからってあんまり目を離すなよ。」
「そりゃお前もだ。」
リュカを口説いてたジルの従弟のオーウェンには既にアメリアが噛み付いているが、昔からああで懲りないオーウェンの態度に給仕の使用人が助けを求めるようにこっちを見ていて、渦中にズカズカ向かっていったジルにほっとした顔をした。
特別賑やかなのはそのくらいで、子供も退場しているから静かなものだが、私はこういう場があまり好きでは無いし、得意でも無く、中盤になってくると黙々と酒を飲んでしまう。
リュカより手前に居るエリはずっと獣人に囲まれているが、相手は紳士的な若者達だ。雰囲気はずっと友好的で、あちらの番もそう遠くない位置に控えている。更に私がエリを見ていた事に気付いた一人が、また私に挨拶しに来る始末だ。
「実はジルさんの所より少し前に、うちにも子供が産まれる予定なんです。それで家を改装したいんですが、何処かでご相談させてくれませんか?」
「ああ。勿論。・・・めでたいな、一人目か。」
「はい。何を準備したら良いのか分からなくて、番たち任せですが。」
自分より4つ下のヘンリーはいつからだったか敬語を使うようになって、年相応に見せているが、嬉しさを隠しきれない様子で微笑んだ。
「エリはビジネスの話が上手いですね。あの様子じゃジェームズも別荘用の土地が欲しいと相談しに来ると思いますよ。」
「そうか。」
「エドガーさんがあんな可愛らしい子を番にするなんて驚きましたけど、ビジネスパートナーにもしたいなら納得です。」
「買い被り過ぎだ。お前の兄は挨拶の途中で笑い出したぞ。」
「っ、それは申し訳無いです・・・。でも、良いご縁に恵まれて、おめでとうございます。」
礼の代わりに私は手を上げた。久しぶりだなすら云い切れず吹き出したヘンリーの兄は正直過ぎるが、それなりに付き合いが長い者はエリを見て驚くか笑うだろうとは思っていた。
エリは年齢通りの見た目をしていて、何なら背は少し低いくらいだ。私と一回りはある歳の差も仕方なく、せめてもうちょっと育つのを待つべきだったのかも知れないが、あの居心地の悪そうな家から早く出してやりたかった。結果論でしか無いが、これで良かったとは思っている。
エリも私の視線に気付いて、余所行きの表情でだが嬉しそうに笑うくらいだ。それからジェームズ達に断って私の元へと戻ってくる。別に不満があってエリの様子を見ていた訳じゃないが、傍に居られた方が安心感はある。誰だって自分の番が一番魅力的に映るものだ。
「お酒、もうちょっと頂いてきますか?」
「いや、もういい。」
「じゃあお水を。」
そう云って自分の分も貰ってきて、私の分を差し出す。普段ならもうエリは眠たがる時間だ。勿論目はぱっちり開いていて、椅子を示すとしゃんと座り、眠気を感じさせない振る舞いだが。
まぁ家に居たって使用人の前でも気を抜かないこの子が自分と居る時だけは甘えたなのは正直堪らない。エリを傍に置くまでは自分がこんな駄目な奴だとは思ってもみなかった。
理性はすぐ飛ぶし、感情で動く事が多くなってしまった。でも、それも悪くないと思っている。
パーティがお開きになったのは日付が変わる頃だった。我が家はそう遠くは無い方だが、こんな時間に車なんて出さんといつもジルが一蹴するので、今夜も上等な部屋が用意されていた。
客室の扉を閉めると、私が手を伸ばす前に、ぎゅうとエリが抱きついてきた。
「今日は疲れただろう?」
「そうですね、少し・・・。でもいろんな人と話せて楽しかったです。」
エリは明るく笑ってみせたが、こういう場はうちに来てから初めてだったのだからもう少し気を遣ってやるべきだったのかも知れない。罪滅ぼしのようにエリを抱き上げ、やっぱり大分疲れたのだろう、すぐに脱力した身体を抱えたまま浴室に向かう。
「湯には浸かれそうか?」
「んー・・・ちょっと眠いです、」
「じゃあ明日入るといい。」
「一緒に入って下さるなら、今日でも・・・。」
そう云いながら私の首元にぐりぐり顔を押し付けて甘える仕草を取り、バスタブに湯を張ってから、少し眠そうなエリの衣類を脱がせる。手で直接身体を洗ってやると気持ち良さそうな表情で、でも口元を押さえて喘ぐのは我慢しようとする。
今晩はもう無理をさせる気は無いのでいたずらに刺激しないよう努めたが、性器を撫でるようにして洗うとすぐ濡れてくるので、前も後ろも念入りに洗い流して先に湯に浸からせる。
でも、私も浸かるとまたぴっとりと身を寄せられてしまった。やっぱり甘えてはくるものの、表情が疲労や眠気とは別に少し暗い気がする。
「獣人とばかりで、他の番とはあまり話せなかっただろう、」
「まぁ、お茶会もあったし、それは良いんですけど・・・。」
エリは珍しく言葉を濁した。エリはかなり若い方だし、うちの種族でも男体の番持ちは少なく、そもそも夜の親睦会はオメガ同士で交流するには向いていない。
昼間は獣人とオメガとで別々に交流会があったが、そこでもまだ馴染めなかったとしても仕方の無い事だ。
「あの・・・、旦那様はどういう感じが好みですか?」
「どういう、とは?」
「女性の方が好きとか、髪が長い方が良いとか、色気はあった方がとか、そういう性的な好みについてです。」
エリがそう、くっ付いたまま真面目な表情で問い掛けてきたので、見当違いに慰めていたつもりの、頭を撫でていた手も止まった。それでもまぁ、質問にちゃんと答えてやりたかったものの、具体的な好みと云うのは自分でもよく分かっていない。
「お前は細いから、もうちょっと肉が付くといいとは思うな。」
「ええと、そうじゃなくって、」
「そういう事はあまり考えた事が無い。今まではどうにもならない時の解消用の相手しか居なかったくらいだしな。・・・お前なら何でもいい。」
「本当に、僕で良いんですか?」
「ああ。」
そう正直に告げると、エリは照れたように笑って、それから熱烈に抱きついてきた。
「そんな事を気にしてたのか?」
「だって美人か可愛らしいか、とにかく華やかなヒトしか居ないんですもん。ちょっと驚きました。」
エリはうちに来るまで自分以外のオメガと交流どころか見掛けた事も無かったのだろう。
まぁ、目を惹く容姿をしている者は大抵オメガだとは謂われている。獣人側から見ると自分の子を孕める種と云う相性の問題なのか、惹かれやすいようで、オメガは魅力的に映る場合が多いが、同性種から見てもそうらしい。
「僕はもうちょっと身長が伸びて欲しいし、色気も欲しいし・・・。」
「まだ成長期だろう。気にしなくても大丈夫だ。」
「はい・・・。」
エリは納得のいっていない、拗ねたような顔のまま頷いた。私は、エリみたいな感じが好みだったのかと揶揄した目で見られたりするが、別にエリが否定的な扱いを受けた訳では無い。
むしろ新たな一員が加わると云うのは皆歓迎するし、エリの生家とは較べ物にならないだろう。
良い家に産まれてもオメガだと判ってしまったばっかりに伴侶も選べない。ヒトの家に嫁がせたら家の恥が露見するからと遠く、付き合いの無い世界へと、大した縁も無いうちへ話が来たくらいだ。そんな身売り話は特別珍しくは無いものの、当人からすれば気の毒な話なので、最初は仲介でもしようかと思った。若くて健康ならそれだけで引く手数多だ。ある程度好きな相手も選べる。自分は淡白な方だからこの子の身元だけ引き受けて、まともな家に引き渡してやれるかと思ったのだ。
『初めまして、ウィリアムズさん。』
でも、私との顔合わせの意味は分かっていただろうに、何の悲しみも嫌悪感も滲ませず、普通にヒトの客人を相手するような態度を取ったエリに興味を持ってしまった。まだ子供と云っていい歳なのに、生まれ持った素質か境遇から後天的に学んだのか、理性的な態度を取る。
笑い方一つにしても品があり、教養もあるから、これからもちゃんと学ばせれば伸びるだろう。それでもオメガだから快楽に弱く出来ている筈のこの子がどう育つか、すぐ近くで見ていたいと思ってしまった。
「・・・旦那様、何考えてます?」
「お前の事だ。心配しなくていい。」
エリは満足そうに微笑んで、私の物が当たる場所に座った。見上げる瞳は薄闇色だが相変わらず絶望の色は見当たらず、獣人相手だろうといつも恐れず真っ直ぐに相手を見る。それはすぐに発情してしまってちょっと腰を揺らして、愛撫を望んでいる時もだ。
「エリ、此処でするか?」
「ベッドが良いです、っ、あ・・・、」
私が仕事中、時間を持て余すのが嫌だから何か勉強したいと云い、やっぱり向上心があったし、物覚えも良いが、色事については徐々に学ばせた方が良かったかも知れない。本人も性交を気に入っているし、その面でも積極的なので今更だが。傍に居ると擦り寄ってくるし、すぐ指なんかを咥えたがる。
「あっ、ん、ン・・・、」
腰を上げさせ、くちくちと、入口の方だけじゃなく奥まで弄ってやる。湯の中だとちゃんと濡れているのか判り辛いが、私にしがみついてよく喘ぎ、頬は紅潮して喜んではいる。
浴室では本人の希望通り指だけにしておいて、ただ中が何度もきつく締め付けるまで悦くし、完全に力の抜けたエリをバスタオルで包んでベッドへと運んだ。
「此処でだと溢さないように出来るか?」
「っ、はい・・、頑張ります、っん・・・、」
頷いたエリにのし掛かり、欲しがってたものを与えると、咥える途中でも気持ち良さそうに達して、少し潮を吹く。なんせ人の家だ、寝具を汚すのは気が引けるが、まあそうなったらなったで仕方無い。ゆっくりと奥まで咥えたエリを抱き上げ、膝に乗せながら好きな場所を突いてやると、小刻みに身体を震わす。
それでもまだまだ快感を得たいのか、前でも悦くなろうとはしたなく男性器を互いの腹の間に擦り付けるので、握って弄ってやり、ついでに小さな胸も触ってやるとよく締まる。
「あ、ン、っ、やっ・・・!」
「嫌じゃないだろう。もっと悦くしてやる。」
あまり身体を支えてやれないまま、力任せに何度も突き上げるとエリがバランスを崩したので、そのままベッドに横たわらせる。そのまま覆い被さり、身動き出来ないエリに腰を打ち付け射精すると、エリも咥えた場所をひくひくと震わせ、一番甘い声で啼いた。
「ぁん、んっ、ふっ、あ・・・、」
エリは奥に注がれるのが好きなのだ。胸を触られるのも好きなようなので、揉んでやりながら腰を動かすと喘ぎ声が止まらず、蕩けた瞳で両手を伸ばしてくる。
「溢れちゃうから、動いちゃ駄目です・・・。」
「このまま寝るか?」
「あの、動物の姿勢も奥に当たるから、四つん這いでもして欲しいです、」
「あれだとお前のが漏れるな、」
「また握っててもらえれば、っ、ん・・、」
「帰ったらしてやる。」
エリは駄々をこねずに熱っぽい表情のまま頷いてみせ、私の腰の方に脚を絡ませてきた。
抱き寄せると私の耳元で、まだ甘さの残る声で囁く。
「旦那様、1回だけで終わらせた事なんて無いから、中、足りないです。」
「・・・・・・。」
「もっと、中に出して欲しいです、」
私も寝転び、恥ずかしそうな表情のエリは逆に自分の上に座らせた。エリは首を傾げたが、両手を繋いで腰を動かし、軽い身体がよく跳ねるように突き上げてやるとまた反応して喘ぎ出す。
これならエリが幾ら達してもどちらかに掛かるだけなので、好きなだけ気を遣れるだろう。やっぱり奥を突き続けると、ぷしゃぷしゃとすぐ潮も出て結合部を酷く濡らす。絶えず卑猥な音がするのに口元も押さえられない体勢に、エリが恥ずかしがって顔を歪め、唇を噛もうとした。
「我慢しなくていい。どうせ防音だ。」
「でも、っ、ん・・、恥ずかしい、っ、です、」
「中が足りないんだろう?また興奮させてくれ。」
「っ、はい・・・!あ、ン!」
私も手を使えないので、エリが咥え込んだ場所しか悦くしてやれないが、エリは顔を赤くして気持ち良さそうに軽く達したり身を捩ったりする。そのたび中が締まって具合が良い。私も先走りが出てしまうし、エリも中を濡らすから、ぐぽぐぽ水音が立って、エリが喘ぎながらも泣きそうな表情で、恥ずかしがって頭を振る。
「ぁん、っ、ン、あっ、ふぁ・・・!」
「ちゃんと奥に当たってるか?」
「はい、っ・・、すごい・・!そこ、此所で欲しいです・・・!」
エリが気に入った場所に先端を押し付け、射精してやると、エリも、きゅうと中を締めて射精する。軽く突き上げながらエリの中に出し切り、それからエリのを握ると、ぴゅ、ぴゅと残滓を出しながら、きゅうきゅう締まる。息を切らせたエリは私の物を咥えたまま、私の上にそっと寝転んだ。
「ずっと見てるばっかりだったの、酷いです・・・。」
「気持ち良さそうで、色気があったぞ。」
「本当ですか?・・・もう、今夜はずっと、塞いで下さいね。」
返事代わりに汗で湿った髪を撫でる。まぁちょっと拗ねた言葉の割に声は笑っていたので、結局今日の性交も嫌じゃ無かったようだが、帰ったらエリの好きなように犯してやろうと思う。全く私の番は甘え上手で可愛らしい。これから背が伸びるか等は分からないが、中身がどう成長するかはやはり楽しみだ。焦らず色んな経験を積んで欲しい。
「ん・・・、ン・・・。」
まぁ、陰部までぴったりくっ付けているのに、そのまま安心しきった顔で眠ろうとするのは困ったものだが、身体に収まったままの熱に時折反応する臀部を揉み拉きながら少し動くと、ぴくぴく身体を震わせて絶頂する。
このままじゃ倦怠感が残るのは確実だろうに私から離れたがらないし、そういえばこうやって微睡むのもエリは好きだった。私は暫く眠りに就けそうには無いが、浅い眠りに就いているエリがずり落ちないように腕を回してやり、気持ちが良いまま眠れるよう、すっかりいやらしくなった身体を支えながら目を閉じた。
ともだちにシェアしよう!