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◆1 ep.3 やきもち性交

「旦那様って傍に置いておきたい人は居ますか?」 休日、新聞に目を向けたままの旦那様の隣に座ってそう問い掛けると、あ、珍しい。視線がすぐ僕の方を向いた。 「お前だな。」 「他には?」 「・・・今の所は居ない。」 発情期の時にも抱かれて僕には歯型が付いた。これで発情期は旦那様以外には拒否反応が出るようになったし、雄を誘う香りも他人には効かなくなる。 でも、僕が番になっても旦那様は他の人を選ぶ事が出来るし、他の雌の発情期にも反応する。とても不平等だ。 「僕だけじゃ駄目ですか?」 「それは負担だろう。」 気の所為だったら良かったのに、やっぱり違った。一緒に居ても余所見をされてるような、そんな気分。性交だって上達してるし、ちゃんと旦那様の形も覚えたのに。 僕は一番で、唯一の存在が良い。他の人なんて傍に置かないで僕だけを特別にしていて欲しいし、この人の役に立ちたい。 多分、繕えてない表情のまま、僕は旦那様の膝に乗り上げた。 「・・・興奮してるのか、」 まぁ、旦那様の傍に居るとすぐ発情してしまうものの、どちらかと云うと興奮させたい僕は黙ってズボンと下着を下ろした。 旦那様は手を伸ばしてくれ、既に少し濡れてしまってる場所を指で拡げていく。指を抜かれると代わりに熱く硬いものが、ひくひくと震える肉を割って入ってくる。 「ん、ン・・・」 覚えた形を全て呑み込む前に揺れ始めてしまった腰を掴まれ、ちゅ、ちゅと奥に口付けられる。欲しかったものを挿れてもらえて奥を突かれると、気持ちが良くて声が出る。 「あっ、・・ん、ンっ・・・!」 旦那様が僕の中を何度も往復して、膨らんでいって、奥にぴったりくっ付いたまま射精されると、つられて僕も善くなって達してしまう。 旦那様の首に、ぎゅうと抱きついて、はぁ、と息を吐くと、旦那様の腕が回り、頭を撫でられた。 「・・・怒っているのか?」 「例えば、子供がすぐにでも欲しいとかなら分かるんですけど・・・。」 それは僕相手じゃ無理だから他の人で済ませたいと云うなら、まだ。でもそういう理由があるとも思えないから、こんな事する相手を増やそうとするなんて許せない。 劣性を駄目にして性交を好きに為らざるを得ない、暴力的なまでに気持ちが良い行為。 子供扱いされたい訳じゃないけれど、確かに少し怒ってもいる僕は、ご機嫌取りにか頬まで撫でられてしまった。 「お前の可能性を狭めたくないからな。」 「・・・・・・。」 旦那様と一番交流があるジルの家は劣性だろうと普通に働いているから、僕も旦那様の役に立ちたくて、家業を少し教えて貰い始めた。劣性だと分かる前は充分過ぎるくらいの教育も受けていたし、土地の扱いに関する基礎的な事は問題なく理解出来た。応用となる重要な部分も勉強すればした分だけ身につくだろう。 「・・・でも、僕にとって重要なのは、貴方のより傍に居られるかどうかなんですけれど、」 僕は旦那様に出来るだけ身を寄せた。情けない話だけれど、手伝いをしない方が可愛がって貰えると云うなら僕はそちらを選ぶし、この人が愛情や欲望を注ぐ相手が僕以外に居ない方が重要だ。家の中に何人も番が居るなんて、絶対僕には耐えられない。 「ね、両方頑張りますから、僕だけが良いです。」 僕がぎこちなく腰を動かすと、小さく息を吐いた旦那様が僕の腰を掴んで、互いに気持ち良くなる動きを教えてくれた。呆れさせてしまったかなと思い、顔が見辛い。 でも旦那様は興奮してくれたのかいつもより動きは乱暴なくらいだし、腰を掴まれたまま気持ち良い箇所ばかり突き上げられると僕も射精と潮が止まらない。旦那様に縋ったまま、旦那様の射精を待つ事しか出来ない。 中を擦られ、自分の愛液の音ばかりするのは恥ずかしいけれど、旦那様が僕の奥に精液を放つ、最高の瞬間。 「ふっ、っ・・・、ん・・。」 「・・・エリ、あんまり煽らないでくれ。」 「ごめんなさい、でも、独り占めしたいです。」 旦那様の射精が終わると僕は抱き直され、渋い顔をしている旦那様に抱きついた。 「もっといっぱい、求められても大丈夫です。」 「まだ子供なんだから無茶するんじゃない。」 「でも、籍も入れたでしょう?」 無事、番になれたからこの間籍を入れた。発情期の性交は凄かった。抑制剤を飲んでいたのに、何をされても凄く気持ちが良いし、達し放しで気を失っても繋がったまま離れずにいられて、難なく旦那様を独り占め出来た時間だった。 「特に男体は大型種相手なら18位にならないと妊娠向きじゃないけど、性交は発情期が来ていれば問題ないみたいですし。大丈夫です。」 僕もこんな表情してたのかな。立場が逆転して今度は旦那様の方がずっと悩んでる顔してる。でも劣性は一人としか番えないんだから、分かって欲しい。ジルの所の番のリュカだって本当に他の番を疎ましく思ってないみたいだけど、この間会った時は妊娠したかもって嬉しそうだったし。やっぱり番相手に特別大事にされたいものだ。 まぁ、今だって大事にされてるとは思っているけれど。甘やかされてると思うし、こんな我儘を云っても叱られたりしない。旦那様と僕とじゃ立場も違うのに。 「・・・。僕は旦那様も、旦那様との性交も好きだから、いつ求められても大丈夫だし・・・。でも、他の人を番にしたくなったら前もって教えて下さいね。」 「ああ。約束する。」 「じゃあ今日のところは良いです。しつこく申し訳ありませんでした。」 僕は旦那様の首に両腕を回して屈んでもらい、寄ったままの眉間に、ちゅ、と口付けた。本当はこんな妥協したくないけれど、あまり子供っぽく拗ねるのも良くない。 それでもやっぱり旦那様から離れがたい僕が、ぎゅっぎゅと抱きついているとソファーに押し倒された。出来るだけ脚を開かされ、シャツの下の素肌に旦那様の指が入ってくる。胸を撫でられ、摘ままれ、旦那様を咥え込んだままの場所が締まるように。僕の首元に旦那様の荒い息も掛かった。 「だ、旦那様・・・?」 「もうちょっと付き合ってくれ。治まらない。」 「喜んで。」 僕はもう一度、旦那様の首元に腕を回し、腰に両足を絡め、また暫くの間揺さぶられる事になった。ああ、やっぱり気持ちが良い。この人の熱に浮かされた目に映るのは自分だけであって欲しいし、やっぱり独り占めしていたい。 旦那様の瞳に映り、求められている自分に満足して、僕は笑ってしまった。

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