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◆2 ep.0.5 番なりたて-大丈夫って云って欲しい番の話

「もう起きてても大丈夫か?」 ドアの隙間から覗いていたリュカは小さく頷いた。暫く近寄ってこないかとも思っていたが、普通に部屋に入ってきて、でもさすがに膝には乗らず俺の傍に立つ。 ついでに確認した項の跡はまだ生々しいが、俺が触れても痛みも羞恥心も無いようで、リュカはただ困ったような表情をした。 「この間の記憶はあるか?」 「気持ち良かったのは覚えてる。」 「そうか。」 ならまぁいい。精通もまだだったし、組み敷いた時も感じたが、改めて見ると子供だ。大きくなったと思っていたが、多分見た目通りの年齢で、本来ならヒートが来る年齢じゃないと考えるのが妥当だろう。 あとは何でも大体奪われる側のオメガの救いに快感の得やすさはあるが、それがリュカにも適応されて良かった。ただ、ヒート時の言動、特に性的合意など絶対に当てにするなとレイラとアメリアには散々云われたが。 「リュカ、今後も一人で外出するなよ。今まで以上に気を付けろ。誰かと出掛けたい時は俺に云ってからだ。」 「うん。分かってる。」 「良い子だ。」 褒めるといつまで経っても恥ずかしそうに微笑む。要領は悪いが、素直で愛嬌ならふんだんにある。誰からも愛される性質だから、どこの家にやっても大丈夫だろうと思ってたのにこの様だ。 とりあえず番にしたからには有事用にうちの家紋が入った首飾りを作らなきゃならない。こいつなら素材は何が良いだろうか。 「ジル、ぼく、どうしたらいい?」 金、銀、プラチナ、宝石、革とリュカの細い首を見ながら考えていたら、リュカが俺を見つめていた。途方に暮れた、曇った瞳で。 「調子が戻ったなら普通に過ごしてていい。ヒートにしては早過ぎだろうから、もう一回医者に診てもらった方が良いな。薬は絶対飲み忘れるなよ。」 「うん。」 まだ訊きたい事があるのか、じっとリュカは立っている。思わず膝を叩くと、いつもより遠慮がちに座った。リュカの短い襟足を触りながら、せめて項をもっと目立たないよう噛んでやれば良かったなと思った。 「跡が目立つから、後ろ髪を伸ばすか?」 「どっちでもいい、」 それは迷う。長い髪も似合うが、どちらの方がよりトラブルを回避出来るだろうか。暫く跡を隠しておくべきか、番と一目で分かる方が良いか。 下ろしたり結いたり髪型のバリエーションが増える方が好きな方を取れるし、ファッションの幅も広がるか。 「じゃあ少し伸ばせ。嫌になったら切ればいい。」 「・・・ジルはぼく相手でも気持ち良くなれるの?」 「ヒートの時しか手は出さないから安心しろ。」 リュカは黙って、服の上から俺のモノを撫でた。絶対にあと数年は必要以上に手を出すなと云うのもレイラとアメリアに誓わされたが、異論は無い。リュカの中が濡れていても解しても、さすがに俺のモノの収まりは悪かった。満足出来ないセックスにこんな子供を付き合わせるのは酷だし、このくらいじゃ興奮もしないが、こんな事になるなら性教育をもっとすべきだったかも知れない。改めてレイラの調子が良い日に依頼しておくべきだろう。 「ジルの、おっきくてびっくりした。」 「お前はまぁ・・・大きくなってもサイズはここまで変わらないだろうな。でももう少ししたらもっと善くなれる筈だ。まだこっちでイけなかったしな。」 俺はリュカのものを指さすに留めた。発情している感じも無いし、ヒートの匂いも完全に治まっている。ただの好奇心か、高熱で飛んだ記憶を整理したいのか分からないが、返事をしてやるとリュカは俯いた。 「うん・・・。」 声のトーンが少し落ちているし、求めているモノも分からない。ただ、寄り掛かられたので抱き寄せると、振り向いて、きゅ、と俺の服を掴む。それからいつだって美しい色の瞳が俺を見上げた。 「大丈夫だ。次はもっと善くしてやる。」 そう答えると、リュカは、ふにゃと笑った。俺には快楽を与える事しか出来ないし、困った事にコイツは憂いた顔をしていると色気が増す。今の年頃でこうなのだから、可能性は計り知れない。まぁ後悔なんてさせないぐらい満足させてやればいいだろう。自分の好みに染められる年だし、長い目で開発しながら、リュカの欲しいものを与えてやれるように。 「・・・ごめんなさい。」 「お前は何も悪くない。」 すぐ落ち込む癖にちゃんと抱きついてきて、まぁ凹凸の無い身体だが、こう全身でくっ付かれているともう、ヒートじゃなくてもそこそこ興奮出来そうな気がする。 やっぱり一度手を出すと駄目だ。でも三ヶ月先の楽しみにしておくしかないし、もう暫く子供扱いしてやりたかったなと思う。ただ可愛がって、知識と自由を与えて。まぁリュカはオメガだったし、もう欲望混じりでもしょうがない。 もうすぐ子供も産まれるし、お互いそれで気が紛れればいいが。 抱き直しながら腕を回し、腰や尻に触れてもまるで動揺しない、やっぱりまだ幼いリュカに気付かれないよう、俺は内心溜息を吐いた。

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