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◆3 ep.4 健全なデート+α
「ねぇ、洋服、どういう感じがいい?」
「・・・お前が着たいやつでいい。」
「じゃあ、これとこれだと?」
「どっちでもいい。」
やっぱりディルはあんまり自分の好みを教えてくれない。でもおれの服、動くのも脱ぐのも楽なの重視で似たりよったりだし、少し余所行きのデザインと素材なら別に何でも良いか。
それでもうなじが見える方が良いのか悪いのかとかは地味に迷うし、そういえば首に付けるモノの確認とかもしてなかったなって今頃気付いた。
「そういえばチョーカー、バルドから貰ったのしか無いんだけど・・・。」
「しなくていいだろ、あんなの。」
「分かった。離れないようにする。」
獣人はみんな、人の多いとこでは自分の番に首輪付けてた方が安心するのかと思ってたけど違うのか。そういえばディルは結構無理矢理したりする割に、どうもオメガのモノ扱いは嫌ってる。
まぁ獣人の連れが居るのにちょっかい出す人なんて普通居ないし、噛み跡もある訳だし、番が良いって云ってるんだから無しで良いか。
それより本当、この後はどうしようかな。この間ディルに、週末は出掛けられるか?と訊かれた時は、デート!?ってはしゃいでみた。やたらとベッドで過ごさない週末なんて久しぶりだし、食料の買い出し以外で一緒に出掛けるのなんて初めてだ。
でもその後告げられた言葉で、おれは非常に困ってしまった。
『お前の誕生日が近いだろ。何か欲しい物、考えとけ。』
そんな、初めて突き付けられた言葉の所為で。
「・・・みんなで食べれるおっきなケーキ。」
「食料は別だろ。」
「じゃあなんか、ディルが脱がせたい服とか。」
「・・・・・・。」
あ、お前はそういう事しか考えられないのかとか云いそうな表情してる。ディルも装飾品とか興味無いもんなぁ。脱ぎ着の楽さは置いといても家の事するにはやっぱ動きやすい方が良いし、アクセサリーも邪魔なだけだし、この前おれにしては洋服も買っちゃったばかりだし。
そんなに外出の機会も無いし、バルドから定期的にお小遣い貰ってた上、何なら遺産の分け前までめちゃくちゃあったから、欲しい物があっても自分のお金で大体買える。ほんと、他人に買ってもらいたいような特別な物って何だろう。どうもおれ、あんまり物欲が無いようだから、こういう時何をねだったらいいのか散々考えたつもりだけど分からない。
「・・・鍋、そろそろ替え時なんだよね。丈夫そうな、大きい奴が欲しいな。」
「だからそういう物は別だ。お前用なんだから、自分が必要な物でいいだろ。」
「うーん・・・。じゃあ、本屋かなぁ。」
本は高価だし、知識を得ると云うより見てるだけでも楽しいのもあるし、ちょうど良い気がする。ディルも何も云わずに付いてきてくれたけど、おれがまっすぐ料理本のコーナーに向かうとまた不満げに口を出してきた。
「お前は家事から離れられないのか?」
「料理、結構好きなんだよね。みんなよく食べてくれるから作り甲斐あるし。」
おれがあの家に入った頃は住み込みで料理を作ってくれる人が居た。でも程なくして高齢の彼女は田舎に帰る事になって、料理に興味を持って作る所をよく眺めてたおれに沢山レシピを残してくれたから、代わりにおれが作り始めた。
最初はあんまり種類も作れなかったし、失敗する事もあったけど、バルドもダルもデルも喜んでくれたし、ディルもおれとは碌に会話してくれなくても作った物はちゃんと食べてくれた。義弟の恋人のルネとリオは流行りものが好きで、一緒に新しいレシピにチャレンジするのも気分転換にもなって楽しい。
「リオが着色した溶かし砂糖でコーティングされたクッキー食べたいって云ってたから、お菓子作りもいいかなって。みんなわりと甘いもの好きだし。」
ディルはまだ納得がいってない顔をしてるけど、何も云わなかった。多分おれのこと気にしてくれてるんだろうな。もっと自分の為になるものにしろ、そんなに家の事ばっか考えなくていいって。
でもおれは自分は相当強運だと思ってる。今の家の前はいかがわしいお店に居たけど、客を取り始める前にバルドに気に入られたから、特に嫌な思い出も無い。バルドの番になったら、若くして亡くなった前の奥さんと出来なかった事、してあげたかった事を沢山してもらった。早めに隠居した人だから、二人で過ごす事も多かったし、よく一緒に出掛けたり旅行もした。やりたかった事はやりきったと思うし、最期の方も穏やかに過ごせてたから、おれも後悔は無い。おれだって自分の身はかわいいけど、当然今の家族のことも大事だし。
親、許婚、配偶者、誰が死んだってそこで自分の人生まで終わらなかった。だから出来るだけ楽しく過ごせるよう、物事の決定権が大体自分には無くたってこれからも、なるべく自分にとって“最善”を選ぶ事くらいはしていきたい。まだディルとの生活も始まったばかりだし。
「・・・あ。」
そっか、一つ欲しいものあった。レシピ本のイラストを見てたら思い付いた、ディルじゃないと叶えられないやつ。
おれは隣のコーナーの物語本をつまらなそうに眺めてるディルに声を掛けた。
「ディル、この本は自分で買うから、悪いけどもう1軒付き合って。さっきの大通り。」
「ああ。」
あの、おれは馴染みのある店に連れていったらディルは多分不機嫌になるだろうな。そんな予測は簡単に付いたけど、おれは楽しい気持ちでディルの腕を引いた。
「で、写真受け取ってきたんだ?」
「うん。貰った写真立てにピッタリ。」
「ほんとは額でもプレゼントしたかったんだけど。」
おっきいやつとダルが腕を広げてみんな笑ったけど、おれの横のディルは嫌そうな表情をした。この間、写真館に連れていった時もそんな感じだったけど、拒否はされなかった。ちょっと不機嫌そうな、ムスッとした顔はいつもの事だし、文句も云わずにおれの要望通り、ちゃんとおれと記念写真を撮ってくれた。
「ディル、あんまり引き伸ばしたくないんだって。おれも机に飾りたかったからちょうど良いよ。」
写真を受け取りがてら、大きな鍋も今食べてるケーキも買ってもらったし、誕生日気分をめちゃくちゃ味わわせてもらった。別に自分の誕生日なんてどうって事ないと思ってても、周りが笑顔でお祝いしてくれるのは素直に嬉しい。まぁディルは笑ってくれないけど、気持ちと行動で示してくれた訳だし、そもそもディルに祝ってもらったのなんて初めてだし。
ケーキも食べ終わって一息ついたら、ダル達に後片付けはしておくからと食堂を追い出され、部屋に戻る途中、ディルが気にしてないような声で云った。
「・・・親父との写真も飾ったままでもいいんだぞ。」
「ちゃんとしまってるから大丈夫だよ。」
おれの部屋にディルが入ってくる事は滅多に無いけど、さすがにそこまで無神経な事はしたくない。バルドとの写真はアルバムにしまってるし、寂しくなった時に見るくらいで満足出来る。やっぱ形に残るものって良いな。次は相手より先におれの方が居なくなる番かも知れないけど。そうなったらディルは悲しんでくれるだろうから、出来ればおれの方がちょっと後が良いんだけど。
いつだって与えられた場所でやってくしか無かったけど、此処が最後の居場所になればなって、そう願っている。ほんとにディルにとっておれは特別なんだなと、結婚して数ヶ月経った今も実感する時があるから。
月に何日かは体調の問題で性行為が出来ないから、娼館行ってきてねって云ってるのに、寄り道したり出掛ける事なく調子が悪いおれの傍に居てくれる。ちょっと前までずっとおれとは碌に会話もしてくれなかったのに、視線を感じる事はよくあったし、目が合う事も多かった。だから、好かれてるならそれだけでいいかなと思っていたのに。
番も婚姻も要は契約で、お互い利点があるから交わすどころか、オメガ相手なら合意なしでも結べる。だから、大事にしてもらえるのがベストだろうけど、好かれているだけでも上等だ。でも、何年経っても同じ熱量の視線を向けられるって云うのはだいぶ、くすぐったい気持ちになる。
多分顔にも出てるんだろう、ディルにはただ訝しげな目で見られたけど。
「何笑ってるんだ、」
「んー?誕生日、楽しかったなって。どうもありがと。」
おれは、ぎゅうとディルの腕に抱きついた。すると満更でもなさそうにフンとディルの鼻が鳴る。機嫌や考えてる事は何となく分かるけど、まだ笑った顔とか見た事無いくらいだ、お互いの事を知るには時間が足りない。おれもすぐ簡単で自分が好きな手段に頼ってしまうし。
「・・・ねぇ、おれが一番喜ぶこと、分かるでしょ?」
ディルの顔を見上げて笑い掛けると、効果はてきめん、おれはベッドにも辿り付けず寝室のドアに背中を押し付けられて、性急にディルが中に挿入ってきた。
碌に慣らされてないからちょっと苦しいけど、ずり落ちないよう抱え上げられて密着してるだけで興奮してきちゃうし、ガンガン腰を打ち付けられてる内に中が拡がって、お互いので濡れてきて気持ち良い。ディルにしがみついて、耳元で囁くともっと良くなる。
「ね、このまま奥、いっぱい出して、」
返事は無くても、おれの中のディルが、ぐぐって膨らむから、おれもディルの首に回した腕に力を込めて、ぎゅうと抱きついた。もう今日はいっぱいサービスしちゃお。
お腹の中も満たして欲しいけど、ディルが1回イったら口でもしたいな。すぐ復活するし回数こなせるから、若い相手って云うのも良い。身体を抱え直され、ガッチガチなの力づくで押し当てられて、びゅーびゅー出てる。
「あっ・・、ふ、あっ・・・。」
「っ、オイ、落ちるなよ。」
「平気・・・。ねっ、口でする、」
すぐ力が入らなくなってしまった腕を緩めて床に下ろしてもらい、しゃがみこんでお互いの体液でベトベトの性器を口に含む。おれはきれいにするみたいに先っぽ吸ったり舐めたりするのが好きだけど、ディルは喉の方まで使って全体をしゃぶられるのが好きだ。もうまたすぐ硬くなってきてるモノをちょっとだけおれの好きなやり方で奉仕してから、喉の方へ押し込んで顔を動かして扱く。
このまま口の中にも出したいかなと思ってたけど、珍しくイく直前に抜かれて、おれはベッドの上に放り投げられた。
「なぁに、もういいの?」
「お前はこっちに出される方が好きだろ。」
「でも口でするのも楽しいよ、っん、」
ディルはフェラ好きだし、おれだって咥えてるだけで興奮出来るし。まぁ確かに足を開かされて腰をガッチリ掴まれて挿れられて、中を掻き回される方が気持ちが良いけど。ディルに覆いかぶさられて遠慮なく腰を打ち付けられるとゾクゾクする。
おれがディルの好きなやり方を把握しているように、ディルにもおれの好きな事はバレてるんだよなぁ。おれの気持ちいいとこばっかり刺激されてイッちゃうと、ディルもおれの中に精液を吐き出す。それだけで気持ち良くてまたイきそうになる。
「っ、んっ、っ、あっ・・・。」
繋がったままディルの上に乗せられて奉仕を求められても、自分が気持ち良くなる事しか考えられない。快感でドロドロな頭と身体を頑張って動かして、ディルのを奥まで咥えて腰を浮かして、打ち付ける行為を繰り返す。
おれの動きが鈍るとおれの性器を引っ張られ、上手くディルを気持ち良く出来ると揉まれる。お陰で中も外もずっとイってるような感覚で身体震えてきてどうしようもなく、動けなくなってきたらディルに腰を掴まれておれの好きな所ばかり突き上げられる。
「やっ、あ、んっ・・・!」
「アンリ、っ、出すぞ、」
「うん、ちょうだい、奥かけて、」
ガツガツ付かれてた子宮口にディルの精液がまた、びゅっびゅと掛けられる。ヒート中じゃなくてもやっぱり此処を刺激されるのが一番気持ちいい。まだ奉仕し足りない気がするけど、ディルの上に崩れ落ちちゃったらもう動きたくなくなってきた。
そのままぴったりくっ付いて甘えてると、おれがずり落ちないように腕を回してくれて、ううん、やっぱり分かりやすく大事にしようとしてくれてるなぁ。
もう疑う余地なくおれがディルに好かれてるのは分かってるし、おれもディルがちょっとずつ歩み寄ってくれてるとことか、乱暴に扱われてもその後少し優しくしてくれる不器用な所とか結構好きなんだけど、幸せにはいつだって終わりがあった。
このまま子供を作らなきゃ来年の誕生日くらいは無事迎えられるだろうか。別に今日ほど祝ってもらえなくて全然良いんだけど、傍には居らればいいのにと思う。
傍に居れば居るほど絶対まだまだ好きになっちゃうだろうし、暫くは平和に過ごせるだろう。でもそれだけじゃ満足出来ないし、自分は案外欲張りだったんだなって思い知ってる。今ある幸せを噛み締めながら、もっと幸せになれる道を探してる。
「・・・・・続き、する?」
ディルに顔を近付け声掛けてみると、ちょっと呆れたみたいな、でも満更でもない顔。この表情見るのも好きだなぁ。やっぱおれはそう簡単には変われないかも。
でもいつまでもこういう手段に頼ってちゃいけない。俺も変わる努力をしなくちゃ。そんな事を思いながら、おれをベッドに落として覆い被さってきたディルの首に手を回して脚を絡ませて、そっと笑い掛けてみた。
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