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高校1年生 (6)

「……俺ね、中学一年生の終業式の日、好きだった子に告白したんだ。相手は割と仲良かった男の子だった。あまり目立つタイプじゃなくて、俺もそうだったから何となく波長が合って一緒にいる時間が増えてって、だんだんその子のこと好きになってたんだ。両思いになれるとか付き合えるとかそんなことは考えてなくて、今思えばただの俺の自己満だったのかもしれない。けどその子はちゃんと聞いて受け止めてくれたんだ。付き合えないけど、俺さえ良かったらこれまでと変わらずに友達でいて欲しいって言ってくれて。学年が変わってクラスが離れる前にと思って勢いで言っちゃったけど引かれると思ってたから、嬉しかったんだ」 俺の知らない片思い相手の話を、青花は穏やかな顔で話していた。その顔に嫉妬心を抱きつつも、青花の話に耳を傾ける。 「春休みがあけて、学校に行った時その子に声掛けたんだ。そうしたら彼は俺を見た途端俯いて、無視したんだ。最初は気のせいかと思った。けど、それが段々と確信に変わっていくんだ。当時のクラスの目立つグループの1人が俺が告白した場面を見ていたらしく、こいつはゲイだ。気持ち悪い、と。……彼は目立つグループに半分脅されるようにしてそのグループの子達と居るようになって俺は孤立した。そこから物を隠されるようになったり机に落書きされたり、中学生とは思えない幼稚ないじめが始まったんだ。幼稚だと分かってても、誰にも相談できないのが辛くて辛くて。そうしたらその年の夏休みに入る前、家庭の事情でその子転校しちゃったんだ。……俺にも何も言わずに。その子が居なくなってもいじめは続いて、秋頃かな、体育館倉庫に連れていかれて閉じ込められた。性行為ってやつを覚えたばかりの中学生が『男が好きならヤらせろ』って。バカみたいだよな。シャツのボタン外されて、ズボンも膝まで下ろされて。抵抗するのも馬鹿らしいって思った時、誰かが倉庫の扉をを開けたんだ」 ……心当たりがあった。授業が終わって部活の前、部室棟に行く途中騒いでいる声が聞こえた。始めは体育のあとの片付けでもやっているのかと思ったが、笑い声と助けを求める声が入り交じっていた。 多分自分じゃなくても気付いた誰かが先生を呼ぶか止めに行くかするだろうと部室に行って着替えることにした。 着替え終わってもまだ声は消えていなかったが、抵抗する声がかなり弱くなっていることに気付いて咄嗟に体育倉庫に向かった。 少し開いていた扉から覗くと、男子が群がって何かをしていた。よく見ると比較的小柄な男子生徒の服を脱がせている。その時の俺は、何が起きているのか全く分からなかったが、自分の中の何かが疼いたのは自覚した。 その子は渡せない。こんな奴らに穢させない。そう思った時にはもう扉を思い切り開けていたんだ。 「そう。颯太だよ。その時の颯太、本当にヒーローみたいだった。……かっこよかった」 俺はね、と話しながら青花は左手を俺の右手に重ねた。 「俺はね、あの時から颯太の事が好きなんだ。もちろん友達としてじゃなくて、そういう意味で。言うつもりはなかったしずっと友達でも一緒にいられたらそれでいいやって思ってたの。だから……んむ!?んんんんっ!ぷは!ちょっと!なんで……む…んっ、はぁっ…あぁ…んん…」 左手で青花の後頭部を掴み離れないように。唇の間に舌を滑り込ませ、歯列が浮いたところですかさず中へ潜り込む。彼の舌に自分の舌を絡め、わざとらしく音を立てる。後頭部にある手をゆっくり首に滑らせれば吐息は濃く漏れるばかり。深く絡めて時に吸って、荒々しいキスは、離れた時にはどちらとも言えない唾液の橋がかかっていた。 青花は涙を浮かべ、俺を睨んだ。 「ねえ颯太……何がしたいの……?そんなに俺をからかって楽しいか!?なんでこんな……」 「からかってない!からかってるわけない。俺は……俺は青花が好きなんだ」 「……嘘……」 「嘘じゃない」 「だって颯太……彼女居たことあるじゃん。ストレートなんでしょ?俺男……」 「知ってるよ。それはさっき風呂でちゃんと確認した」 「ばっかじゃないの!?」 「馬鹿……なのかな」 「馬鹿だよ!!思わせぶりなことばっかりして!!」 「こんだけやってて……ちょっとは自惚れろ!俺は青花が好きだし、今の続きも……青花としたい。あの時から俺もお前が好きだった」 青花は浮かべていた涙をボロボロとこぼし始めた。 「……本当に……?」 「本当に」 今度はどちらともなくキスをした。互いの唇の形を覚えるように、じわじわ熱が伝わっていくのを感じながら徐々に動きを加えていく。柔らかい唇が濡れ、熱が広がっていく。伝えあった愛を確かなものと感じるように寄り添いそのまま眠りについた。

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