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高校1年生 (10)
丸一日、丸一日連絡が無かっただけでこんなになるなんて。目の上に乗せられたホットタオルをずらし、隣でテレビを見ている青花の横顔を見る。
視線に気付いた青花が視線を合わせてきた。
「どうした?飲み物飲む?」
体調を崩していたはずなのに、自分のことは何も言わず優しく気遣ってくれる。
「好きだよ、青花」
「え!?なに急に!びっくりした。……俺も好きだよ、颯太」
髪を撫でてそのまま顔を引き寄せると、驚いた表情で見下ろしてくる。
お互い目を閉じ、触れるだけのキスをする。
「かーわいい」
「もう……」
青花の頭を再び撫で、俺は上半身を横に倒した。
「ごめんやっぱりちょっと寝かせて……」
「俺の膝枕で寝れる?硬いでしょ」
「んー、大丈夫気持ち良い。青花の匂いがする」
「なんか恥ずかしいし変態っぽいよ!?」
青花はそっと頭を撫でてくれた。規則的なリズムで撫でられじわじわと眠気が強くなる。
――可愛くてもちゃんと手は大きいんだな
などと考えていると、青花は撫でていた手を止め、ぬるくなってスースー冷たい風を感じるようになったタオルをどかした。
急に光が届き眩しさで瞼をギュッとした時、今度は青花の手が乗せられた。
「眩しかったね。さっきのタオルよりこっちの方が温かいでしょ?」
青花に包み込まれているような感覚でとても心地よかった。
「温かい。一時間くらいで起こして」
「了解」
俺は目の上に乗せていない空いている方の手を繋いで貰い、意識を手放した。
目を覚ますとまず第一に見えたのは青花の顔。
「天使か……」
テレビを見ていた青花がこちらを向いた。
「起きた?颯太。てか天使って何さ」
「どのくらい寝てた?」
「んーと、三時間くらいかな!」
「嘘!?」
飛び起きて時計を見ると確かに時間は16時過ぎを指していた。
「一時間くらいで起こしてって言ったのに……」
「昨日寝てなかったわけだし、気持ちよさそうに寝てたからさ。寝顔、可愛くて……つい」
「〜〜〜!!」
眠気が無くなりスッキリしたのは事実だが、寝顔を見られていたのはこの上なく恥ずかしい。……それも至近距離!!
「おかげでだいぶ寝れたし良いよ、ありがとう」
「どういたしまして」
ニコッと笑った青花だが、そういえば来た時から荷物を持っていない。服やらタオルやら生活に必要なものは貸せるし、新品の歯ブラシだってあるから確かに単身でも泊まりには来れるが、青花は来る時走ったと言っていたし、なにか事情があったのだろうか。
「ん?どうかした?」
考えている間じーっと青花を見つめてしまっていたことに気付く。
「いや。そういえば青花、荷物何も持ってきてないから――」
「ああ!そうだよ!一回家に戻って取ってこなきゃと思ってたんだ!忘れてた」
慌てて立ち上がった青花は糸の切れたあやつり人形のようにストンと膝をついた。
「青花!?」
「……気付いてなかったんだけど、足痺れてたみたい」
2人同時に吹き出し、ひとしきり笑って青花の足の痺れが取れるのを待ち、一緒に青花の家へ向かった。
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