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高校1年生 (11)
「俺たちの家って近くて遠いよね」
青花の家へ向かい歩いている最中、青花が言った。
「歩いて40分か。電車乗るのも遠回りで行きづらいしな。バス停のある通りまで微妙に遠いし。同じ中学の学区内ったって、方向違ったらそんなもんだよな」
「もうちょっと近かったら良かったのに」
「じゃあ一緒に住むか」
青花が首が取れるのではないかという勢いで目を輝かせてこちらに顔を向けた。
「いい!!それすごくいい!!ルームシェア最高じゃん!颯太となら絶対楽しいし、賛成だよ!」
青花はかなり上機嫌になった。何気なく言ったが俺も青花とのルームシェアはいいと思う。毎日一緒に居られると思うと、今からドキドキしてしまう。先日青花の家に泊まった時の朝の光景が浮かんだ。
頭の中のエプロン青花が朝ごはんを作る手を止め「おはよう」と笑いかけてくれる。俺は「おはよう」と返事をし、後ろから抱きしめて……
「…………た。そ……た?おーい、颯太?」
青花に呼ばれ現実に引き戻される。怪訝そうに顔を覗き込まれていて、驚いて思わず一歩下がってしまった。
「もう。ニヤけてるし話聞いてないし何考えてたのさ」
「ごめん。……え、ニヤけてた……?俺が?」
「そうだよ他に誰がいるの」
青花はムスッとしてそっぽ向いた。
「ちょ、ごめんって」
「何考えてたか教えてくれたら許してあげる」
「えぇーっとそれは……」
「やましいことなんだ。へー?」
――こいつ……分かっててやってるな?お前だってニヤけてるじゃんか!
「悪かったって。この間のこと思い出してたんだよ――」
素直に話すと青花は腹を抱えて笑った。……そんなに笑わなくても良くないか?
あまり笑われすぎるので羞恥がピークに来て、そんな青花の髪をぐしゃぐしゃしたりじゃれ合いながら歩いていると、目当ての家が見えてきた。
青花の家に着くと、菫さんが待っていて、一昨日の夜青花がまとめたであろう荷物を玄関に置いておいてくれた。
「菫さん。すみません、俺まで来てしまって」
「あら、そんなの気にしなくていいのよ。ここも我が家だと思って気軽に来ていいのよ?颯太くんなら大歓迎だわ!本当にうちの子になる?」
「ちょっと母さん!?」
菫さん、冗談に聞こえないです。
青花とそっくりな顔でニコッと笑ったこの人は、一体どこまで知っているのだろうか。一瞬中を覗き込まれるような母親というものの怖さのようなものを感じ背筋に冷たいものが走った。
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