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高校1年生 (12)

服等私物をカバンに詰めるため青花は自室へ行き、俺はというと菫さんに呼ばれリビングでお茶を出されていた。 「昨日は……ごめんなさいね。青花連絡してなかったんでしょう?」 「大丈夫ですよ!心配はしましたけど、それでもちゃんとその日のうちには来ましたし」 そう?とお茶を飲む菫さんは一つ一つの動きに女性らしい、お淑やかな雰囲気が溢れ出ていた。というより若い。かなり若い。きっと青花のお姉さんだと名乗ってもバレることは無いだろう。 「ねえ颯太くん」 「は、はい」 「青花から……何か聞いてる?」 唐突だった。これは何に対しての話なのか……聞き方からして俺と青花の関係性ではない話だろう。とすると他に心当たりはない。 「いえ、特には何も」 「そう……。あの子ね、無理しちゃうのいつも。だからもしかしたら颯太くんと一緒にいる時にも何かあるかもしれないのよ。あの子としてはそんな姿意地でも見せたくないでしょうけどね」 菫さんの含みを帯びた話し方が引っかかった。肝心なことは言わないけど何かを忠告されている感覚。すると菫さんは立ち上がり、メモとペンを持ってきてサラサラと何かを書き始めた。 「これ渡しておくわね。私の連絡先と病院の連絡先」 「え、病院?青花どこか悪いんですか?」 「……」 「菫さん」 「……青花は――」 信じられなかった。青花が病気を患っており、普段は目立った症状はないこと、突発的に心筋症状が出たり呼吸器に影響が出たりするのだという。 それも、最近その症状が出るスパンが短くなってきていて、医者の話では先が長くなく、あと数年で限界が来るのではないか、という見解だった。 「じゃあ、昨日青花が来なかったのって……」 「私が朝部屋に行ったら……。そのまま病院に運ばれて、大事をとって一日だけ入院になったのよ。今朝退院して、青花そのまま颯太くんの家に走っていったわ」 ――『ごめんね、すぐに連絡できなくて。次からはちゃんと連絡するから』 ――『ふふっ。颯太、そんなに心配してくれたんだね。ありがとう。……ね、俺だって会いたかったんだよ。顔見せてよ』 ――『俺早く来たくて途中走ってさ、ちょっと疲れちゃったから休みたいなー』 青花が家に来た時の光景が浮かぶ。確かに少し疲れてるように見えたけど、それは単に走ってきたからで…… 元気そうだったのに、病気だなんて。 「青花ね、颯太くんのこと大好きなのよ。信頼してるみたいだし」 菫さんが窓の外を眺めながらポソッと呟いた。 するとパタパタと階段を走り降りてくる音が聞こえてきた。 「おまたせ颯太!準備できたよ!」 「よし、じゃあ行くか。菫さん、ありがとうございました」 「颯太くん」 菫さんは席を立った俺に近づいてきて耳打ちした。 「青花、颯太くんに好きって言われて喜んでたわ。青花のこと、よろしくね」 顔に熱が集中していくのがわかる。 任せて下さいと答え、俺は青花の元へ歩いた。 最後に見た菫さんの切なくも優しい笑顔の理由は俺と菫さんの秘密だ。

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