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高校1年生 (16)

さてここで一つ、俺には分からない点がある。それは俺達の関係性についてだ。俺は出会った時から颯太が好きで、颯太も俺のことを好きって思ってくれていた。言ってくれたし、その先の行為もしている。しかし、「付き合おう」とは言われていなくて、俺もそれは言っていない。 恋人にはなっていないが友達以上のことをしている不思議な関係。 正直なところ、俺としては付き合っても付き合わなくてもどちらでもいい。理由としてはまず性別。お互い好きであっても、どう足掻いても俺達は男同士だ。付き合っても突き合っても子供が生まれることは無いし結婚もできない。 であればわざわざ付き合う必要はないのではないか、という現実的な考えがずっと付き纏っている。もう一つ理由はあるけれど……。ただ色々考えても俺の素直な気持ちとしては、付き合ってって言ってもらいたい!これが一番なんだよな。 颯太が泊まりにきて帰ったあと、俺は母さんに颯太のことを話した。昔いじめられた時に助けてくれた子が颯太であること、ずっと好きだったこと、それから好きだと言われたこと。 いじめのことに関しては流石に持ち物が減ったり異常に汚れたりする日があって、その時バレて、経緯も全部話した。だから、颯太とのことを話した時本当に喜んでくれた。付き合うってなったらそれこそまた喜んでくれるんだろうな。 ……どうやら俺は颯太とちゃんと付き合えること望んでしまっているらしい。 枕元でしゃがんで俺の頭を撫でていた颯太が急に「つめて」と言い出し、布団に入ってきた。 「お前自分のベッドあるだろ。そっちで寝ろよ」 「添い寝させて?」 「俺布団からはみ出そうなんだけど。ってかはみ出てるんだけど」 「んー、じゃあはい、こっち」 はい、と枕を引っこ抜かれて差し出されたのは腕。 俺は仕方なく頭を乗せる。 「もっとこっち」 肘近くに置いた頭を肩の方にぐいっと寄せられた。 颯太の顔がグッと近くなって意識した途端ぶわっと身体中に熱が広がった。 赤くなった頬を隠すため颯太の胸へ押し付けるようにして顔を埋めると、颯太の空いていた手はゆっくり俺の髪を撫で始めた。 ――あ、これすごく落ち着く。 大好きな人の腕の中で、大好きな人の匂いに包まれている。なんて幸せなのだろう。このままずっと続けばいいのに。ありもしない永遠を願ってしまう。 ――俺はそんなに長くない。だから悲しませるくらいなら颯太と付き合わない方がいいし、隠し通せるなら病気のことも隠し通したい。でも、どうせ死ぬならその時は、今みたいに颯太に抱きしめていて欲しい。 「颯太」 「どうした?」 「俺、颯太に話さないといけないことがあるんだ」 「うん。聞かせて」 俺は、病気を患っていること、普段は何ともないが突発的に症状が出ること、治療法がなく、病院に行ってもその時の症状を緩和するだけで病気自体は良くならないこと、颯太の家に行くはずだった昨日も症状が出てしまい一日入院してからここに来たことを、颯太が撫でてくれる速度に合わせてゆっくりゆっくり話した。 そっか、と呟き撫でていた手は俺の背に回り強く抱きしめられた。 「話してくれてありがとう。辛かったよな。その、できる限り俺も力になりたいと思ってるから、何かあったら遠慮なんかせずに言ってな」 「ん、……ありがとう」 「それじゃ、次は俺の番な」 抱きしめる手を弛め、互いの顔にピントが合うように少し離れる。 「青花、ちゃんと言ってなくてごめん。……俺と付き合ってくれませんか?」 「う、そ……ほんとに……?」 「ほんと。病気だってのも、聞いたからこそちゃんと一番近くで支えたいって思ったんだ。っておい泣くなよ」 泣き虫だな、と言いながら抱きしめて涙を拭ってくれるこの人の隣に、俺が立ってしまっていいのだろうか。決心したのに余命があと数年しかないことも伝えられない俺が受け入れていいのだろうか。すぐに答えを言えずに考えていると涙が止まらない瞼にそっとキスが落とされた。 ――ああ、隣に立っていいかじゃない。俺が隣に居たいんだ 「……俺でいいの?」 「青花がいい。青花じゃないと嫌だ」 「うっ……ありがとう。その、よろしくお願いします」 「やった!」 再び強く抱きしめられた。 ごめんね颯太。実はまだ言えてないことがあるんだよ。俺の命はあと数年。だけどどうかそれまでは俺に颯太の時間をください。少しでいいから颯太の隣に立つことを、どうか許してください――

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