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高校2年生 (1)

眠っている白い手を両手ですくい上げしっかり握る。取り付けられた酸素マスクが一定間隔に曇るのが青花の生を感じさせてくれる。揺れる救急車の中でただ手を握り祈ることしか出来ず、自分の無力さを恨んだ。 病院に到着したところで、直ぐに検査で運ばれた。菫さんも後から来て、待合室で待った。 「青花は大丈夫です。また何事も無かったかのように笑ってくれますよ」 「そうね、そうね……」 それから青花が目を覚ましたのは二日後だった。 「颯太、ごめんね心配かけて。颯太が早く救急車とか病院に連絡してくれたから早く対処ができたんだって先生に言われたよ。だから颯太、そんなに泣かないで」 「俺、このまま青花が目を覚まさなかったらって考えたら怖くて怖くて」 「うん」 「俺普段こんなに泣かねーのに、青花のこと考えると苦しくて」 「俺が颯太を泣き虫にしちゃったんだねぇ」 「まったく情けねぇ」 「そんなことないよ。俺は好き」 抱きしめた肩が、抱き締め返してくれるその腕が、どんどん細くなっていく。元々余分な肉もなく体力もそんなになかった青花はやつれていく様子が明らかで、すぐにでも倒れてしまいそうだった。 「俺も好きだよ」 「うん。知ってる」 俺は青花と一緒に居たいだけなのに、俺の気持ちとは裏腹に青花の命はどんどん消えていってしまう。青花の病気は治らない。なら、今の俺には何ができるか。この日から俺の病院通いは再開し、その度にお土産を持っていくことにした。授業ノートの他にお菓子や置物、花、写真、思い付くものは片っ端から持って行った。 持っていく度青花は喜んでくれて、リクエストもくれるようになった。 青花は毎日体力の低下を防ぐためにリハビリや散歩を毎日行っている。 大体昼間に済ませてしまうため夕方行く頃にはリハビリは無いが、よく散歩に行くようになった。 普段発作が無ければ青花の体調は至って普通だが、やはり入院したことで少し弱った気がする。気持ち的にもそう強くは居られないだろう。 夕方散歩に出て、陽が落ち始めた庭のベンチで2人座りながら、青花がリクエストしたしゃぼん玉を2人で飛ばす。 「俺しゃぼん玉なんて小学生以来だ」 「俺も。俺は下手したら幼稚園以来だな……自分で買ったのなんか初めてだったよ」 「そうだよね。昔は母さんが飛ばしたしゃぼん玉を追いかけて走り回ってたなぁ。懐かしいや。大きくなってからでも面白いもんだね。買ってきてもらって良かった」 浮かんだしゃぼん玉は夕陽に吸い込まれるように漂い、やがて弾けた。 俺はただ、浮かんでは消えるしゃぼん玉を眺めている青花の横顔を見つめることしか出来なかった。

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