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高校2年生 (9)

入院して一週間、病室は個室だったためのんびり過ごしていた。とはいえ検査の毎日で、疲れない日はない。正直嫌になるけど、颯太と生きるためだと考えると頑張れるような気がした。 ――颯太に会いたい 病院が遠くなったため、以前のように学校帰りに寄ることが出来なくなり、SNSでのやり取りのみになっていた。そのSNSも、昨日から返事がない。颯太は颯太で忙しいも思うし、何せ病院が遠くなってしまったために、会いに来て欲しいとも言いづらい。 「会いたいな……」 するとドアがトントンと叩かれ、外から「失礼します」と聞こえる。「どうぞ」と答えると、そこには求めていた姿があった。 「青花!調子はどう?」 「颯太……!」 座っていたベッドから降り、駆け寄り飛びついた。 大好きな匂いを鼻いっぱい、肺いっぱいに吸い込み、マーキングするように首元に頭を擦り付けた。 「青花、猫みたい」 笑って髪を撫でてくれるこの感覚が久しぶりで、脳が熔けるようだ。 「青花、これクラスのみんなから」 「うわぁ千羽鶴!何だかんだ実物見たの初めてだ!ありがとう!」 「おう」 手渡された紙袋から千羽鶴を取りだし、病室入口付近のフックに引っ掛けた。そのついでに病室の中にある小さな冷蔵庫からペットボトルのお茶を出して颯太に手渡し、プラスチックコップとスナック菓子を棚から出した。 「お前……めちゃくちゃ自由に過ごしてんだな」 「まあね。食べ物とか飲み物の制限がある病気じゃないし、検査の為に調整はするけど、何も無い時は好きにしてるよ」 はい、とコップについだお茶を差し出す。 颯太がスナック菓子を開封していいか聞いてきたため、窓を開けてOKサインを出す。いくら食べてもいいとはいえ匂いが篭もるとさすがに看護師さんに怒られる。 外からは湿気のあるぬるい風が入ってきて、夏が近付いていることを思い知らされる。 「あ、そうそう。あれの日決まったよ」 言った途端笑顔だった颯太の表情が固まる。 「七月二十日だってさ。夏休み前かな?颯太には居て欲しいんだけど、期末テストとかどんな感じ?」 「期末テストはその頃ちょうど終わるはず。来れるよ。というかテスト終わってなくても来る」 何よりも俺を一番に考えてくれる颯太。彼の人生を俺なんかが独り占めしてしまっていいのだろうか、と時折不安になる。ましてもうすぐ死ぬかもしれないし、眠っても起きられる保証もない。 「不安、だよな」 「え?」 お菓子を食べていた手を止め、俺に近付いてきたかと思うと、汚れてない方の手を頭にポンと置いた。 「大丈夫。俺はそばにいるから」 手離したくない。俺は絶対颯太の元に帰ってくるんだ。 ふと誕生日会の時玲子さんに言われたことを思い出した。 「颯太、子供って欲しい?」 颯太は何の話だ、とキョトンとしている。 「ふふ。誕生日会の時玲子さんに、孫の顔が見たかったって言われたんだ」 颯太の眉がピクっと動いた。当然だ。俺も颯太も男だから、子供なんて産めるはずがない。だから、俺にそれを言うということは、多少なりとも反対したい気持ちが残っているということ。お互い一人っ子であるため自分たちが一緒になればお互いの両親は一生孫の顔を見ることは無い。 「母さんそんなこと言ってたのか。気にしなくてもいいぞ」 悲しそうに颯太は言うが、俺はそうは思わないんだ。確かに孫が欲しかったと言ったが、玲子さんは俺たちの仲を反対しているわけじゃない。だったら、別の方法でもいいはずだ。 「ねえ颯太、提案があるんだけど……」

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