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高校2年生 (11)

青花のケースは珍しいためか、前日の七月十九日から二十日にかけて家族が病院に泊まることを許された。それから家族と他でもない青花の嘆願で颯太も残れることになった。青花の病室のソファで両親は座って眠り、颯太は青花と一緒にベッドに入った。 「……狭いね」 「1人用のベッドだし、俺らももう高校生だしな」 横向きで青花の方を向いて寝ていると、狭いから、と青花は体を密着させ胸に顔を埋めてきた。 「颯太」 小さく名前を呼ぶ声は少し震えているように思えた。 「ん?」 「怖いよ」 俺は咄嗟に青花を腕の中に閉じ込めた。このまま離したくない。離れて欲しくない。それでもこれは二人で……いや、俺が決めたことだ。俺が望んだ。青花が先の未来まで生きることを。弱音を吐きそうになる。俺が選んだことなのに謝ってしまいそうになる。後悔していると、今からでもやめよう、と言いそうになる。だけどそれは青花の覚悟を無駄にすることになってしまう。それはしたくない。 「青花、正直俺も怖いよ。だけど、俺待ってるから。青花が起きた時、きっと俺は社会人だから、ちゃんと就職して、お金貯めて待ってるから。二人で生きていけるように俺頑張るよ。青花も、起きれたら日本初どころか世界初だろ?世界初だぞ。かっこいいじゃんか」 「……ふふ。そうだね。世界初だ。頑張らないとね」 「おう」 撫でてやると、青花はすぅすぅと規則的な呼吸に変わっていった。 「おやすみ青花。……また明日」 青花の額に唇を落とし、俺も目を閉じた。 七月二十日、窓から差し込む光で目を覚ますと、腕の中で愛しい人が眠っている。ここが病院でなければきっと最高の気分だっただろう。 しばらく会えなくなる恋人の匂いを焼き付けるように大きく息を吸い込んだ。 青花の肉体はこれから液体窒素によって瞬間的に冷凍される。中に余分なものを入れておかないよう、数日間絶食しており、水のみ飲んでいた。それでも老廃物は排出されるため、今は最後の浣腸を行っている。 その間菫さんと誠さんは医師に呼ばれ、改めて説明を受けていた。俺はすることも無く、ただデイルームで待っていると、一人の看護師が話しかけてきた。 「君、橘くんのところに付き添いに来てる子……だよね。兄弟?」 話しかけてきたのは若い男性の看護師だった。 「いえ、その、友人です」 彼は笑顔で「そうか」と頷いた。 正面の席に座っていいか聞かれたため促すと、正面の席に腰を下ろした。 「手術……って言ったら違うけど当日に、それも平日なのに泊まりで来てるって、君たち相当仲が良いんだね。羨ましいよ」 「ありがとうございます」 「恋人だったりするの?」 「え……?」 彼の表情は変わらず笑顔だった。

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