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ピンク色の……? (2)
桃花さんから連絡が来たのはその日の夕方だった。買い物をしたいから付き合って欲しい、とのことだった。
日取りはこちらが決めていいとのことだったので、翌週の日曜日を提案し、了承のメッセージがきた。
当日、待ち合わせ場所には十分前に着くように家を出たはずだが、そこには既に桃花さんが立っていて、柱にもたれ掛かるようにして待っていた。
「桃花さん!」
声をかけると、気付いた桃花さんはもたれかかっていた柱から離れ、俺に駆け寄り飛びついた。
「来てくれて嬉しいよ!」
「来ないことも想定してたんですか?」
「約束すっぽかされるのはよくあるからねぇ」
桃花さんは白いセーターにグレーのスラックス、ベージュのトレンチコートとシンプルな服装だった。女性とも男性ともとれる中性的なルックスだ。
元々顔も中性的であるためどちらとも捉えられるだろう。
そう言えば出会ったあの日は車椅子に乗っていたが、今日は普通に歩いている。
足が悪いわけではないのか?
「あの、桃花さん、今日は車椅子じゃなくても大丈夫なんですか?」
「うん。あの時は検査続きで疲れちゃって貧血になっただけで、車椅子使うほどでもなかったんだけど一応って乗せられてたんだよね。もしかして気にしてくれた感じ?大丈夫だから気にしなくていいよ!」
「ならまあ。何も無いなら良かったです」
「うん!ありがとうね!それじゃ行こっか。バスの時間はもうちょっとだね」
背丈や体格なんかが青花に似ているため、いちいち青花と比べてしまうが、この人は青花より数倍テンションが高い。
ショッピングモールについてからは怒涛の買い物ラッシュだった。
服やアクセサリーに限らず雑貨や食料品など、既に俺の腕は追加の袋を吊るす余地は残されていない。
新しく別のお店に入ろうとした桃花さんを引き止め、休憩することにした。
フードコートに寄り桃花さんはクレープを、俺はアイスティーを注文した。
「ごめんね颯太くん。久しぶりのお買い物でついつい楽しくなっちゃって」
「いいですよ。俺も普段自分じゃ見ないようなものを見る機会になったので楽しかったですし」
「うん、君本当に良い子だね。ますます欲しくなっちゃう」
「……帰りますよ」
「ごめん冗談だよ帰らないで」
桃花さんは半分まで食べかけていたクレープを口に詰め込み、立ち上がった。
「まだ行きたいところあるんだ。次で最後にするから付き合ってくれる?」
「分かりました」
俺もアイスティーを飲み干し荷物をまとめて持った。
「あー!待って今度はちゃんと私が半分持つから!」
俺の左手から荷物を取ると花歌を歌いながら歩き出した。
それなりに荷物は重量があるが、桃花さんは結構力持ちなんだな、なんて思いながら後をついて行った。
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