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ピンク色の……? (3)

鼻歌交じりに歩いている桃花さんについって行った先はアーケードゲームが立ち並ぶゲームコーナーだった。 クレーンゲームの景品を眺めつつさらに奥へ進んでいき、目の前にはカラフルに装飾されたプリクラコーナー。 「颯太くん!撮ろう!」 輝かせた目にノーとは言えず、俺は頷いて返した。 桃花さんが選んだ台の撮影スペースに入るとまず金額に驚いた。 昔彼女がいた時は二百円や三百円で撮れたが、今は四百円……ってか照明も多い! 「今は昔よりかなり性能上がったよね」 桃花さんは財布から四百円を取り出し台に入れた。 「後で半分渡します」 「ううん。私が撮りたくて来てもらったし、これは出させて!」 撮影が始まるとポーズや表情などを指定されて、まるでモデルにでもなったような不思議な感覚になった。 終了して落書きスペースに移るとそこには先程撮ったばかりのプリクラが映し出されている。 「目でか!誰ですかこれ」 「えー?颯太くんそれ自分じゃん!」 驚いた。隣でケラケラ笑っている桃花さんは元々目が大きいせいで、さらに大きくなりまるで少女漫画のヒロインのようになっている。 隣を見るとるんるんで落書きを楽しんでいる姿があり、俺は慣れないデコレーションは諦め全てのプリクラに日付を入れていく作業を繰り返した。 落書きスペースを出て出来上がりを待っている間、見渡すと周りは九割若い女性だった。俺がここにいて怪しまれないか心配したが、きっと隣に桃花さんがいるからだろう、特別注目されるようなことはなく、みんなそれぞれに楽しんでいるようだった。 時間も時間だったため、出来上がったプリクラを満足そうに見つめている桃花さんを促し、帰るためにバス停に向かった。 「今日はありがとうね!颯太くん!楽しかったよ!」 「はい。俺も楽しかったです」 「でも君は今日ずっと……いや、なんでもないよ。今度私が働いてる店においでよ!一杯奢るし、お世話になってる人達紹介するからさ!」 「桃花さん社会人だったんですね。どこで働いてるんですか?奢る、となると飲食店?」 「うん!バーだよ!誘う前に気づけば良かった。颯太くんお酒飲める?」 「大丈夫ですよ。一応人並みには飲めます」 「良かった!じゃあ私が作って振舞っちゃおうかな!……と、バス来たね!」 乗り込んだバスの中では静かで、桃花さんはずっと窓から遠くの夕陽を眺めていた。 俺の家の最寄り駅に着き二人で降りたが、桃花さんの家の場所は聞いていなかった。待ち合わせもここだったが遠くなかっただろうか。 「桃花さん、荷物多いですし家まで送りますよ?どこですか?」 「大丈夫だよ。迎えに来てもらう予定だから!」 すると桃花さんはスマホを数回タップし電話をかけた。 「もしもし?私。荷物多いから朝降りたところと同じとこに迎えに来て欲しいな。……うん。ありがとう、お願い。それじゃ」 電話を終了して五分ほどで、一台の白い車が目の前に止まり、助手席側の窓が開いた。 「桃花様、お迎えに上がりました」 「ありがとう桜木」 桜木、と呼ばれた男性は運転席に座る四十代くらいのスーツの男性で、少々威圧感のある顔をしている。 桃花さんはトランクを開け、今日の戦利品たちを乗せていく。 「あの、桃花さん、お身内の方……ですか?」 「うん。実家で雇ってるお手伝い……というかほぼ運転手」 「もしかして桃花さんのご実家って結構その……」 「ふふ。お金持ち、だよ。もう私は実家を出ちゃってるけど、今度遊びに来てもいいよ」 ニコッと笑うと荷物を乗せ終わったトランクを閉め、桜木がドアを開けて待っていた後部座席へ乗り込んだ。 下ろした窓から桃花さんは顔を覗かせる。 「それじゃあ颯太くん、また今度!あとでお店のURL送るから来てね!待ってるから!」 返事をしてお辞儀をすると、桜木さんが車を出した。 見えなくなるまで手を振っていた姿が青花と重なって苦しくなったのは秘密だ。

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