44 / 52
ピンク色の……? (4)
その日は連絡が来ず、月曜になりいつも通り登校した。
教室のドアを開けると、既に来ていたのは瑛二だけだった。
「瑛二おはよう。今日はいつもより早いな」
瑛二がイヤホンを外し、体ごと振り返る。
「おはよう颯太くん。さあさあ、昨日のことを聞かせてくれたまへ」
「なんだよその口調は」
「なんだとは酷いな。どう?楽しかった?」
「ああ。楽しかったよ。中学生ぶりにプリクラも撮った」
昨日撮ったプリクラを瑛二に見せると立ち上がるわ叫ぶわ大興奮だった。
「なんか二人カップルみたい……きっと橘が起きてたらこんな風になってたんじゃないかな、とか考えるとちょっと胸が痛いな」
昨日丸一日悩んでいたことを口に出され、心臓が大きく跳ねたのが分かった。俺は今どんな顔をしている?
今日学校に来た時、桃花さんと初めて会ったあの時、瑛二から見て俺はどんな顔をしていたのだろうか。何を思って今日朝早く学校に来て待っていてくれたのだろう。
フッ、と微笑み、瑛二は腕を広げた。
開かれた腕に吸い寄せられるようにゆっくりとを足を進めて瑛二の脇の下から腕を通すと、背中にギュッと力を込められた。密着した胸が温かく、瞼が熱を持ち始めたため、バレないように俯くしか無かった。
落ち着いたところで、瑛二の肩の前側がしっかり濡れてしまっていることに気付いて慌てて目元を手の甲で拭い顔を上げる。
「ごめん瑛二!俺何も考えずに……」
「いいよ。大丈夫だから気にしないで。それよりもうすぐ先生来るし、顔洗いに行こう?」
気付いていなかったがクラスメイトたちはもう九割集まっていた。みんな参考書に目を落としたり、近くの席の人と話したり、平静を装ってくれていた。
「……うん」
瑛二が肩を抱くようにして外に連れ出してくれたとき、何やらみんなに合図のようなものを送っていたように思えたが、みっともなく泣いてしまった顔では恥ずかしくて確認しようもなかった。
水道で顔を洗ったが赤くなってしまった目や鼻はすぐには熱が引かず、先生に驚かれながらもそのまま一日勉強した。
「うん、赤みは引いたな。明日も腫れは残るかもしれないけど、帰ってからホットタオルとか乗せるといいよ」
「そうする。今日はありがとな」
「いやいや。まさか泣き出しちゃうとまでは思わなかったけど、落ち着いてよかった」
教室を出て靴箱へ向かう途中で、ズボンのポケットに入れていたスマホのバイブが鳴った。
画面を開くと桃花さんからのメッセージだった。
『 おつかれさま!私のお店の場所教えるの忘れてたよ!URL貼っとくね!週末にでもおいでよ!』
瑛二も気になったようで「桃花さん?」と言いながらスマホ画面を覗き込んできた。
「へぇ、お店……それ僕も行っていいかな?」
「桃花さんに確認するよ」
メッセージを送るとすぐにOKが返って来て、瑛二はガッツポーズを決める。
――金曜日、夜
「いらっしゃーい!って、颯太くんに瑛二くん!来てくれたんだ!こっちこっち!」
学校が終わってから、ホームページに書かれていた住所を頼りにお店に行くと、瞳と同じ桃色のツヤツヤしたドレスに身を包んだ桃花さんが迎えてくれた。
「桃花さん……美人……」
隣の瑛二は……あ、うん、固まってるね。
ともだちにシェアしよう!