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ピンク色の……? (5)

カウンターの席に案内され、ホールを駆け回っていた桃花さんはカウンターに入ってきた。 「来てくれてありがとう。何か飲みたいのある?おまかせだったら何か勝手に作るけど」 「えっと、俺バーとか来たことなくて分からないので、お願いしてもいいですか?」 「もちろん!瑛二くんは?……瑛二くん?おーい」 隣を見ると、瑛二は恍惚とした表情のまま動かなくなっていた。目の前で桃花さんが手をヒラヒラさせても反応すらしない。 「うん、じゃあ瑛二くんのもなにか適当に作るね!」 少し悩んだ桃花さんは、慣れた手つきでミキシンググラスを手に取り、材料を入れてかき混ぜる。 「はい、どうぞ。こっちは瑛二くんのね」 あっという間に出来上がってしまった。 出されたお酒は赤褐色にレッドチェリーが添えられたお酒で、いかにも「大人」な感じの雰囲気がした。 口に含むと甘みは感じるがそれよりも、これまで飲んだことない程のアルコールの強さに驚いた。 「あはは!強かった?これはね、『ロブロイ』ってカクテルなの」 「ロブロイ……あの、なんでこれを?」 「んー、ひみつ♪」 それから少し談笑していると、桃花さんは他の席で呼ばれたようで離れてしまった。 瑛二が飲んでいたものは「カーディナル」というカクテルらしく、俺のロブロイと同じように赤いカクテルで、飲んでいる本人はどうやら既に酔ってしまっているようだった。 「あなた達がモモちゃんのオトモダチね?」 カウンターに入ってきたのは、黒い長い髪を結い上げた背の高い綺麗な人だった。緩くウェーブのかかった髪は薄暗い店内の照明によってツヤツヤ輝いている。 「あの、はい。俺は望月颯太です」 「柚木瑛二で〜す」 「ちょっと瑛二しっかりしてよ。すみません、お水頂いてもいいですか?」 「ええもちろん。颯太くんに瑛二くんね!私はここのママをやってるミキよ。よろしく。で、どっちがモモちゃんの彼氏?」 「ええ!?いやいや!違います!」 「そーお?てっきりどっちかがモモちゃんと付き合ってるのかと思ったわ。それじゃあ漁りに来たのかしら!若いっていいわねぇ!いい男はいた?」 身を乗り出してグイグイくるママに若干押されすぎて上半身は仰け反ってしまって何となく戻せない。 「ん?男漁りも違うの?……もしかしてここがどういう場所かも知らないとか?」 「……?ここってどんなとこなんですか?」 「ゲイバーよん」 「え、えぇ!?」 「その様子じゃ知らなかったようね。モモちゃんにはなんて言われてるの?」 「バーで働いてて、一杯奢る、と……」 なるほど、とうんうん頷いた。 「もしかして最初は二人じゃなくて一人で来る予定だったんじゃない?……そうねぇ、颯太くんの方かしら」 あっさり当てられて驚いて固まっていると、当たりね、と言ってクスッと笑った。 その瞬間肩にズンッと重さを感じ、ふわっと甘い匂いがした。 「ちょっとママ!まだ私話してないんだから先に話さないでよ」 重さの乗った首を少し横に向けると、ムスッと口を尖らせた桃花さんが俺の首に巻きついているのが分かった。 桃花さんの言葉を聞いてママさんはため息をつく。 「いつもいつも……また奥使う気?」 「だめ?」 「良いけど……いい加減その癖やめなさいよね」 「はーい!ね、颯太くん!見せたいものあるの。ちょっと行くの部屋まで来てくれない!?」 巻きついていた桃花さんが離れると、そのまま手首を捕まれ椅子から降ろされたかと思うと、そのままカウンター横の入口に連れていかれた。 「瑛二!」 「お?おー、」 「待って。私瑛二くんともうちょっとお話したいの。ここにいてくれない?」 ミキがカウンターに置かれた瑛二の手にスルッと手を重ね、指を絡めていく。 「あ、え、……はい」 瑛二は鼻の下をすっかり伸ばして真っ赤になっている。俺は引っ張られるまま奥へ奥へ進んで行くと、キラキラした装飾と、部屋の真ん中にはベッドが1つ置いていった。 キョロキョロしているとそのまま手を引かれ、そのベッド投げられた。 状況が飲み込めずにいると、すかさず腹の上に跨ってきた桃花さんがペロリと唇を舐めた。

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