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第10話(1)
◆家出。◆
「月夜の馬鹿っ!」
俺は近所迷惑なのも気にも留めず、藍色に染まった空にぽっかりと浮かぶ満月に向かって大声で叫んだ。
どこか遠くの方では、ワオーンと犬の遠吠えが聞こえる。
俺は今、ひとりきりで薄暗い夜道を歩いている。
たったひとりで……。
月夜が悪いんだ。
今日が何の日か覚えていないから。
今日は俺と月夜が付き合いはじめて一年目になるとても大切な記念日なんだ。
それなのに、月夜に今日が何の日か訊いても返事がなくて。
それで腹が立ったからマンションを出てきた。
月夜は今、風呂に入っている。
これはささやかな月夜への抵抗だ。
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