92 / 103

第10話(3)

 華やかな世界に俺みたいな(まが)い物はいらない。  だったら……月夜の邪魔をしちゃ悪い。  葉桜家の跡取りとして、月夜が歩く道は光で照らされるべきだ。  男の俺と恋仲になるなんてあってはならない。 「家に、帰ろうかな」  一年前と同じように、父さんと母さん。それから双子の妹・花音(かのん)と四人で元通り一緒に暮らすんだ。  月夜がいない日常に戻るんだ――。  ああ、だけど。月夜と離れたくないって思う自分がいる。  月夜、俺のこと、ずっと好きだって言ってくれたのに……。  胸が苦しい。  痛い。  どうして俺は男に生まれたんだろう。  どうして俺は月夜を好きになったのだろう。  この想いはけっして報われるはずがないのに。

ともだちにシェアしよう!