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第10話(4)
「月、夜」
ああ、ダメだ。悲しくてもう動けない。立っている気力さえもなくて、崩れ落ちた。
涙で視界が滲 む。
「うっ、うっ……」
道ばたにしゃがみ込んで嗚咽 を漏らす俺はなんて滑稽 だろう。
俺ばっかりが月夜を好きなんだって思い知らされる。
「亜瑠兎!」
うずくまってしまった俺の背後から、聞き慣れた声がしたのは気のせいだ。だって月夜は俺と一緒にいるより、あの記者と話している方がいいだろうから。
きっと今頃は俺が部屋にいないのをいいことに、あの記者を連れ込んでいるのかもしれない。
それで俺の知らないところでふたり、月夜が俺にしたように、あの記者にもしているのかもしれない。
『愛してる』とかそう言って――。
「も、最悪……俺ばっかり……」
「亜瑠兎!!」
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