94 / 103

第10話(5)

 ああ、まただ。  うずくまって(うつむ)いていると、二度にわたって知っている声が聞こえた。  慌てて振り返ると、そこには……。 「……っは?」  月夜がいた。  額からこめかみにかけて伝っている雫は汗なのか。  薄い唇は息を切らし、肩を上下に揺らしている。  どうしてそこまでして俺を探すの?  あの女性記者は部屋に呼んでないの? 「月夜? なんで? あの女性と一緒にいるんじゃ……」  俺が訊ねると、月夜の眉間に皺が寄った。 「あの女性?」  逆に訊き返された。  ……俺の思い違いなのだろうか。てっきりあの記者が月夜のお気に入りなんだと思っていたのに……。 「あ、えっと。なんで月夜が外に?」  俺はさっきまでの苛立ちを忘れて訊き直した。 「風呂から上がったら君の姿が見えなくて、玄関のドアの鍵も開いていたし。おそらく外だろうと思ってね」 「……っつ」

ともだちにシェアしよう!