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第10話(5)
ああ、まただ。
うずくまって俯 いていると、二度にわたって知っている声が聞こえた。
慌てて振り返ると、そこには……。
「……っは?」
月夜がいた。
額からこめかみにかけて伝っている雫は汗なのか。
薄い唇は息を切らし、肩を上下に揺らしている。
どうしてそこまでして俺を探すの?
あの女性記者は部屋に呼んでないの?
「月夜? なんで? あの女性と一緒にいるんじゃ……」
俺が訊ねると、月夜の眉間に皺が寄った。
「あの女性?」
逆に訊き返された。
……俺の思い違いなのだろうか。てっきりあの記者が月夜のお気に入りなんだと思っていたのに……。
「あ、えっと。なんで月夜が外に?」
俺はさっきまでの苛立ちを忘れて訊き直した。
「風呂から上がったら君の姿が見えなくて、玄関のドアの鍵も開いていたし。おそらく外だろうと思ってね」
「……っつ」
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