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第10話(7)
月夜は突然俺の腕を取り、マンションへと歩き出す。俺の手をグイグイ引っ張って、それっきり無言のままマンションの中に入って行く。
「…………」
なんだか月夜、ものすごく怒ってるみたいだ。
……月夜を怒らせてしまった。
って、怒ってるのは俺の方なのに、なんで俺が月夜の顔色を窺(うかが)わなきゃならないんだ?
それはきっと……。
それだけ、俺は月夜が好きだという証拠なのだろう。
繋がれた手を離さないでと思う自分が情けない。
胸が痛いよ、月夜。
エレベーターに乗せられて、月夜と俺の部屋に辿り着くと、月夜はリビングにある椅子を引いた。
「ここに座って」
「なんでっ」
「いいから、ほら」
月夜はいつになく強引に、抵抗する俺を座らせた。するとタイミングよくチャイムの音が鳴った。
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