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第10話(8)

「やっと来た」  月夜はそう言うと、軽い足取りですぐさま玄関へ向かう。  俺をひとり、リビングに残して――……。 「………」  時刻は夜九時を回っている。  今時分誰だろう。  もしかして、月夜は例の女性記者を呼んだのだろうか。 『亜瑠兎なんかいらない。今、自分が好きな人はこの女性だ』って、そう言うために……。  ――俺、馬鹿だ。  まだ少しでも俺に未練があるんじゃないかって思うなんて。  記念日を忘れるほど、月夜は俺の事をなんとも思っていないのに!! 「つきや……俺は……」  涙が頬を伝う。  俺は俯き、玄関にいるだろう月夜に気づかれないよう、ただ泣き声を殺す。  ここから離れようとするのに……ああ、ダメだ。  身体に力が入らない。 「ごめんね待たせて。――って、どうしたの? どこか痛い?」

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