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第1話(7)
「やあ、月夜。久しぶりだね」
男の人は、やはり月夜と顔見知りなのか、楽しそうに話しかけた。
「隼翔 …………」
対する月夜は、なんだかとても嫌そうだ。
それは男の人の名前なのだろう。月夜が、眉間に皺を寄せながらそう言った。
俺は嫌悪感丸出しの月夜から隼翔という男の人へと視線を変えた。
睨みをきかせている月夜とは対照的に、隼翔さんの口元は弧を描いている。
……なんか……月夜がこういう顔をするの、はじめて見るかも……。
「なぜ、お前がここにいるんだ……」
「なぜって。だって、あくまで君の隣の部屋が俺の仮住まいだし? 俺の住まいに戻ってきて何が悪いのかな?
それより、まさか君がここにいるとは思わなかったけどね。
しかも! こんなに、かわいい子と同居とはね……」
彼はそう言うと、俺のエプロン姿をジロジロ見てきた。
「っつ!」
まずい。月夜との仲を感づかれた!
ドクンッ。
隼翔さんの言葉が、俺の心臓を射抜く。
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