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第1話(8)
……どうしよう。
月夜との関係がバレた。
いや、そりゃ、バレるか……。
だって今、俺は月夜に抱きしめられてるわけだし……。
――というか、『かわいい子』って何?
この人もまさか、同性愛を受け入れているの?
たしかに、さっき、俺の尻を撫でていたし、経験豊富っぽそうだったし。
そうでなければ初対面相手にまず、ああいったスキンシップを取る人なんていないだろう。
「亜瑠兎くんっていうんだね。俺は矢車 隼翔 。よろしくね。
いや~、月夜、君にも春が来たんだね。
おめでとう!!」
隼翔さんは両手を広げ、月夜を祝う。
だけど、なんか、ちょっとこの言い方って、ケンカを売ってるっぽい。
「何がおめでとうだ。お前に祝福されるいわれなどない」
月夜は怒りをあらわにした。
……たしかに、嫌みったらしいこの言い方は、俺もちょっとカチンとくる。
……空気がギスギスする。
このふたりの間に、いったい何があるんだろう。
――なんて自分の立場を忘れて悠長に考えていると……。
「へ? うわわっ」
俺の身体が、ふんわりと宙に浮いた。
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