16 / 103
第1話(9)
景色が変わる。
にこやかに笑う隼翔さんが見えなくなったかと思えば、月夜の綺麗な顔が俺の目の前にあった。
で、今、俺はどういう体勢かというと……。
月夜に横抱きにされていたりする……。
「あの、月夜?」
しどろもどろになっている俺に対して、月夜はとても冷静だ。というか、なんか、怒ってない?
隼翔さんに背中を向けた。
え?
家の中に入るの?
だってまだ隼翔さんと話している途中なのに?
「隼翔、金輪際 、亜瑠兎に近づくな!!」
月夜はそう吐き捨てて、俺を横抱きにしたまま玄関のドアを器用に開けた。
「やれやれ、君も大変な人に好かれてしまったね」
月夜には返事もせず、隼翔さんは視線を俺に向け、肩をすくめた。
そうして、俺の視界は勢いよく閉まる玄関のドアによって遮られた。
「あ、あの! 月夜、隼翔さんがっ……んぅ!?」
ともだちにシェアしよう!