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第1話(11)

 そのたびに、水音が生まれ、ざらついた舌の感覚だけでなく、聴覚さえも俺を襲う。  月夜の胸板を押して、キスから逃れようとすると、重ねた唇はより深くなっていく……。  月夜のあたたかな吐息が、俺の頬に触れる。  重ねた俺の口から流れる唾液は自分のものなのか、それとも月夜のものなのか、わからない。  頭がぼーっとする。 「ん、っふ……んあ……」  もう、だめ。  何も考えられない……。  月夜からの誘惑に負けた俺は、自ら舌を伸ばし、絡ませた。  月夜の背中へと腕をまわす。 「ん、ううっ、っふ……」  月夜とのキスに夢中になっていると、気がつけば、俺はベッドに寝かされていた。  月夜の唇が俺の唇から離れて行けば、名残を惜しむかのように、唾液が糸になって後を追う。  目の前には、月夜の綺麗な顔がある。

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