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第1話(14)
月夜じゃないと抱きしめられても嬉しくない。
月夜じゃなきゃ、嫌だ。
「違う!! 俺はいつだって月夜だけだ!!」
なんとか信じてもらいたくて必死に首を振れば……。
「ふ~ん」
月夜はやっぱり唇の端をつり上げて笑っている。
いつもみたいは優しい笑顔じゃない。
「月夜? なんでっ!」
どうしてそんな言い方をするの?
「隼翔には何もされてないの?」
されるわけがない。
まぁ、尻は触られたけど……でも、それだけといえばそれだけだ。
俺は何度も大きくうなずき、隼翔さんには他に何もされていないと否定した。
すると、月夜はいつものような優しい雰囲気に戻って、「そう」と微笑んでくれた。
……よかった。
信じてくれたんだ。
ほっと胸を撫で下ろした直後、月夜から、恐ろしい言葉が放たれた。
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