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第2話(3)
今は良くても、月夜は必ず俺を捨てるから……。
そんな悲しいことを考えながら、俺は何をしているのかっていうと……首元にあるネクタイと格闘中だ。
――今日は平日。
時刻は7時50分だ。
物思いにふけっていたせいか、はたまた生まれつき不器用なのが悪いのか、首元にあるネクタイがなかなか結べない。
「……っ!! …………んでっ」
なんで俺って……いつもこう、不器用なのだろう。
毎度毎度、こんな俺に腹が立つ。
「亜瑠兎……用意は……」
洗面所の扉から顔を出したのは、もちろん月夜だ。
花音として過ごしていた時もそうだったが……リボンやネクタイさえも上手く結べないって……どうよ。
同い年の月夜は完璧にできているというのに……。
「…………………」
無言で振り返る俺に、月夜は「ああ」と頷 き、手を伸ばした。
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