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第2話(8)
「亜瑠兎から離れたくなくて、つい学校を二の次にしてしまった」
「……っんなっ!!」
卑怯だ。
月夜は卑怯だ。
そんなことを言われたら、俺は月夜から離れられなくなる……。
ずっと、側にいたいと思ってしまう。
ずるい。
「亜瑠兎?」
月夜が心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
たぶん、俺のせいだ。
俺、今……とてつもなく情けない顔をしているんだと思う。
「なんでもない」
俺は月夜の腕からすり抜けた。
傍らに置いている学生カバンを取ると、先に家を出ていく。
月夜に心配をかけたくない。
だけど俺は知っている。
こうやって俺が何もないフリをしている今も、月夜は俺の事を気に掛けてくれているんだ。
かなわない。
ほんとに……月夜にはかなわない。
だからこそ、月夜のまわりには綺麗な女性が集まるんだ。
だからこそ、俺は不安になる。
その不安な気持ちはやがて現実になるんだ。
第2話・無自覚王子様。完
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