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第3話(2)
「山下ですが、葉桜 月夜さんはいらっしゃるかしら? 以前お話させていただいた件で少しお時間をいただきたいのだけれど……」
受話器からは、聞いたことのない40代くらいの女性の声が聞こえてきた。
以前お話した件?
月夜に?
いったい、なんだろう?
「いえ、月夜さんは離席しておりますが……お取次ぎしましょうか?」
機転を利かしてそう言った俺だったが、彼女の次の言葉で言わなければ良かったと後悔した。
後悔先に立たずってほんと、こういうことを言うんだろうなってまざまざと理解した。
「……そう、そうね。お願いします。以前お話させていただいた、井上 怜美 さんとのお見合いの件ですが、先方さんは大変乗り気でいらっしゃって……。会っていただけるだけでいいので、もう一度お考え直しいただけないかと思って――」
……見合い……。
月夜が……?
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