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第3話(3)
『見合い』という言葉を聞いただけで、胸が締めつけられる。
あまりにもショックが大きすぎた。
俺の手にはもう握る力さえもない。
俺の手から離れた受話器は、空中で振り子のように左右へと大きく揺れている。
まるで今の俺の心境そのままだ。
「…………」
こうなることは目に見えていた。
以前は許嫁という花音の存在があったから、見合いなんてものは存在しなかったが、嘉門さんは許嫁を解消した。
だから必然的に、月夜の元にはこういう話が持ち上がってくる。
そんなことは、もう知っていた。
ハズだった。
それなのに、たった三文字の言葉で俺の胸は押し潰されそうになるんだ。
だけどいずれは月夜とは別れなければならない。
俺と月夜の仲は不安定なものだっていうことも知っていた。
だったら……。
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