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第3話(4)
……なぜ、月夜は見合いのことを何も言ってくれなかったんだろう。
それだけ、月夜にとって俺は必要な存在じゃないっていうことなのか?
口では俺のことを好きとか言っておいて、でもその実は見合いのことを伝える価値もないって、そう思っているの?
「つきや…………」
俺……もう、タイムリミットなのか?
もう、あなたと離れなければならない?
もう、飽きられた?
「……っつ」
胸がズキズキする。
息、できない。
なんとかしようと思うのに、視界が涙で歪む。
俺はただ黙ってそこにいることもできなくなった。玄関のドアノブを掴み、外に出た。
俺、いったいどこに行こうとしているんだろう。
わからない。
だけどあの広い部屋にひとりきりでは居られない。
玄関を出た俺は、しばらくの間ドアの前で立ち往生をしていたが、ややあってエレベーターに向かった。
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