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第3話(8)
隼翔さんの部屋にお邪魔しているのに、そっちのけで考え込んでいた俺は、掛けられた声にはっとして、膝の上で組んでいた手から視線を持ち上げた。
「あっ、はい……すみません……」
慌てて返事をした声は震えている。
そんな聞き取りにくい俺の声も、隼翔さんはきちんと聞いてくれていた。
「そう。でも、君が泣いている理由は月夜と何かあったから。だよね」
隼翔さんは鋭い。
俺が泣いていた理由を言い当てた。
いや、隼翔さんが鋭いんじゃなくって、俺がわかりやすいだけか……。
笑おうとしたのに……全然ダメだ。
眉の端は下がり、口元はへの字になる。
そのことが、よりもどかしい気持ちにさせてくる。
言っても……いいのだろうか……。
隼翔さんを見つめれば、彼は頭を傾けて微笑んだ。
その仕草も月夜に似ていてびっくりする。
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