48 / 103
第3話(9)
「俺……」
隼翔さんの仕草が、硬く閉ざしていた俺の唇を開かせる。
「月夜、見合いするんだ。だけど俺はそれを知らなかったんだ」
いつかは月夜とは別れなければならない。
だけど俺たちはまだ高校生だし、急がなくてもいい。
まだ大丈夫。
まだ別れなくてもいい。
そう勝手に決めて、居心地のいい月夜の隣にいた。
でも……。
「月夜が見合いをするって言わなかったのは、きっと月夜にとって俺が打ち明けるほど重要でもないからで……。
俺ばっかりが、月夜を好きなんだ……。
もしかしたら月夜は俺と別れたがっているかもしれないのに、優しさに甘えてそんなことも気づかなかったんだ……」
ああ、まずいな。
俺の声、すごく震えている。
思っていることを言葉に出せば、目から涙がこぼれ落ちた。
握りしめている両手に雫が落ちる。
ともだちにシェアしよう!